「月経が不規則」「採卵しても良い卵子が育たない」「AMHの数値が低いと言われた」――。それは卵巣機能低下が関係しているかもしれません。
加齢やストレス、生活習慣の乱れ、ホルモンバランスの崩れが重なると、卵巣がうまく働かなくなり、妊娠が難しくなることもあります。西洋医学ではホルモン治療などが主流ですが、体質の根本改善を目指すなら、漢方薬によるアプローチも有効です。
本記事では、「気・血・水」や「五臓(特に腎)」のバランスを重視する中医学の視点から、卵巣機能低下の原因と改善方法、実際の体験談や生活習慣の見直しポイントまでをご紹介します。妊活に悩む方や自然な方法で体を整えたい方にとって、きっとヒントになるはずです。
1.卵巣機能低下に悩んだら、漢方薬でできる体質改善
卵巣機能低下とは
卵巣が正常に働かなくる事で、卵子の成長が順調にすすまず、月経不順や無月経などがおこる事を卵巣機能低下と言います。また不妊治療を行う上でも、卵巣機能低下により、良好な卵子が成長しないことから、妊娠に至らず、不妊症の大きな原因のひとつと言えます。
卵巣機能低下は、通常加齢によりおこりますが、早期卵巣不全(POF)早発卵巣不全(POI)などのように、年齢的に早い段階で、卵が育たず、生理不順や無月経になる方もいらっしゃいます。
卵巣機能低下の原因は膠原病や甲状腺疾患がある方、卵巣の手術や卵巣がんの治療によっておこります。また、ストレスや、生活習慣なども影響し、睡眠不足や、喫煙、過度の飲酒、無理なダイエットも卵巣機能低下を引き起こす要因と言えます。
治療は妊娠を希望する場合は、卵巣を刺激するホルモン剤などが用いられます。
この記事では、漢方薬での卵巣機能の改善方法を解説していきたいと思います。
2.卵巣機能低下はなぜ起こっているのか?漢方薬の考え方でひも解く
卵巣機能を高める漢方の考え方「気・血・水」と「肝・心・脾・肺・腎」
中医学では人間の身体の機能を五臓(肝、心、脾、肺、腎)の五臓に分けて考えます。
そのうちの腎は、成長、発育、老化をつかさどり、ホルモンや、生殖に影響します。
出典元:PURA VIDA
女性は7の倍数で身体が変化し、7×2(14歳)で初潮を迎え7×3(21歳)でホルモンが成長し、7×4(28歳)で成熟し、7×5(35歳)以降からは腎の衰えが始まり、腎虚が進み始めます。
腎は成長過程で、成熟期を迎え、そして35歳を過ぎたころから、徐々に力が弱くなっていき、腎虚となり、それと共に卵巣機能も低下していきます。
また中医学では身体の構成要素を「気、血、水」に分けて考えます。
◆「気」は 体の生命エネルギー の ようなもの
気の不足した状態を「気虚」と言います。気虚になると、生命力が低下し、疲れやすくなったり、倦怠感が出てきます。また身体を温める機能の低下から冷えを生じやすくなり、冷えは血流悪化につながり、結果として卵巣機能の低下につながります。
◆「血」は身体を滋潤したり 栄養素を運んだり、 ホルモンのバランスに影響
「血」の流れが悪い状態を「お血」と言い、「お血」は血流の悪化から、血液の粘稠度が増大し、凝固の亢進、血栓、癒着、繊維化、などの病態が発生し、卵巣嚢腫、子宮腺筋症や子宮内膜症、子宮筋腫などの原因となります。「お血」による卵巣嚢腫やチョコレート嚢腫は卵巣機能低下につながります。
◆「水」は 血液以外の液体を表す
「水」が滞った状態を「水滞」や「痰湿」といいます。水が身体の中で停滞してしまう事で、むくみやすくなり、身体が冷えやすくなります。冷えは卵巣機能低下の要因になります。また痰湿とお血が組み合わさる事で、卵巣嚢腫やチョコレート嚢腫の原因となり、卵巣機能低下を招きます。
気、血、水が滞りなくスムーズに流れることで、卵巣の状態も健康に保たれ、卵巣機能を維持することができます。
3.卵巣機能をサポート、改善する代表的な漢方
知柏地黄丸(ちばくじおうがん)
月経周期が短く、排卵が早くなりがち、オリモノが少ない、のぼせやほてりがあるなどのホットフラッシュのような症状のある方に適しています。
参茸補血丸(さんじょうほけつがん)
補腎剤と補血剤で構成されているため、卵巣機能が低く、冷えや貧血などがある方に適しています。
温経湯(うんけいとう)
血流障害などの「お血」タイプで冷えのぼせがある方に適しています。他の補腎剤と合わせて使う事が多いです。
加味逍遙散(かみしょうようさん)
ストレスやホルモンバランスの乱れに効果がある卵巣機能低下には他の補腎剤と合わせて服用いただく事が多いです。
※生理周期やその他体質によって適した処方が違ってきます。服用の際は専門の薬剤師にご相談下さい。
4.実際に漢方で卵巣機能低下が改善した体験談
40歳
37歳で結婚してすぐに不妊治療をスタートした、人工授精を5回したがうまくいかず、体外受精にステップアップ。AMH0.7と卵巣機能低下と言われた。
8回採卵。採卵しても凍結できないこともある。6回移植したが、5回は陰性。一度妊娠判定出たが初期流産。不育症の検査は問題なし。病院ですすめられる検査はすべてしたが、卵巣機能低下以外には問題はないと言われる。
採卵に向けて、卵巣機能を改善目的の漢方薬を服用開始。服用開始から3か月後に採卵。
7個採卵出来、そのうち良好胚が3個凍結できた。その後移植して、陽性判定。妊娠中も順調に経過し、無事に出産。
41歳
不妊治療を始めて7年経過。採卵と移植を繰り返してもうまくいかないという事で、他県よりご相談に来られた。AMHは0.5で病院では卵巣機能低下と言われている。
移植は8回しているが、そのうち2回は初期流産。あとは陰性判定。漢方薬を服用開始から、10か月後に採卵。2個凍結できその2個を移植して、妊娠判定陽性。無事に女の赤ちゃんをご出産。
5.漢方と併用することで効果が高まる生活習慣のポイント
ストレッチやヨガ、ウォーキングなどの適度な運動は血流改善になるため、習慣化しましょう。
食事は動物性たんぱく質を多くとり、ビタミンやミネラルの補給の為、野菜も適度にとりましょう。
糖質に偏った食事は、身体の糖化が進む原因となり、卵巣機能低下につながります。甘いものや糖質に偏った食事はひかえましょう。
良質な睡眠は良い卵子作ることに必須です。早寝早起きを習慣にしましょう。身体を冷やすような、食べ物や飲み物はひかえましょう。
ストレスがかかると交感神経が優位となり、血管が収縮し、卵巣機能低下につながります。できるだけリラックスできる環境を作りましょう。
6.まとめ
妊娠に至らない要因は人それぞれですが、卵巣機能低下によるものはその中で多くの割合を占めています。卵巣機能は通常、年齢と共に低下していきます。年齢を戻すことはできませんが、漢方薬を服用することで、血流やリンパの流れが改善し、以前よりも良い卵子が育つように身体や卵巣の環境を改善することが可能です。
なごみ堂では、月経周期や、生理痛のあるなし、オリモノの状態、子宮筋腫や内膜症などの有無、冷えや、睡眠状況、イライラや不安感といった、精神状態などをお聞きします。また病院で治療や検査をされている方は、検査結果や治療経緯などを詳しくお伺いします。そしてその方に適した漢方薬を服用して頂きます。
お話を詳しくお伺いする事で、体質に合った漢方薬をお選びすることができます。お話をしていただく事で解決の道筋が見え、身体だけでなく気持ちも前向きになれます。卵巣機能低下でお悩みの方は一度是非ご相談ください。