不育症の原因と漢方による体質改善|繰り返す流産の不安にできること

この記事の監修者
片山智子
漢方薬なごみ堂 / 漢方薬剤師
片山 智子
東京・横浜・札幌などで漢方薬の経験を積んで参りました。 女性薬剤師として、女性ならではのデリケートなお悩みをご相談ください。お身体の状態をよく伺った上で、あなたに合った漢方薬をご提案させていただきます。 なかなか相談できない…などと一人で悩まずに、一度ぜひご来店ください。

「妊娠はできるのに、なぜかいつも途中で流産してしまう…」
そんな辛い経験を繰り返している方へ、それは不育症かもしれません。
不育症とは、2回以上の流産や死産、新生児の早期死亡を繰り返す状態を指します。原因として、血液の凝固異常、子宮の形態異常、内分泌異常、染色体異常などが挙げられますが、実は6割以上が原因不明とも言われています。

そんな中、注目されているのが漢方による体質改善です。冷えやむくみ、倦怠感など、検査では「異常なし」とされる不調も、漢方では重要な“体のサイン”として捉えられます。この記事では、不育症の基本的な知識とあわせて、東洋医学から見た原因のひも解き、漢方薬による改善法、実際の体験談、セルフケアのポイントまで詳しくご紹介します

1.不育症とは

不育症とは、妊娠したのち
①流産を2回以上繰り返す
②また22週以降で死産
③新生児の生後一週間以内での死亡

と定義されています。

しかし流産は妊娠した方の15~20%におこると言われており、特に初期流産の場合、胎児の染色体異常によるものがほとんどです。
また妊娠時の年齢が高いほど、胎児の染色体異常が増えるため、流産率も高くなってきます。しかし、流産を2度3度と繰り返す場合は、胎児側の問題ではなく、母体の問題の可能性が考えられます。

不育症とは病気ではなく、妊娠継続できないという症状です。
不育症の原因となるリスク因子は以下のものが考えられます。

①凝固異常

血液中の凝固因子(血液を固めて血を止める働き)に異常があると、血栓が作られやすくなり、流産や死産を繰り返すことがあります。
凝固因子異常の疾患として、抗リン脂質抗体症候群、プロテインS欠乏症、プロテインC欠乏症などがあります。

②子宮形態異常

子宮の形によっては、受精卵の着床の障害になったり、胎児や胎盤を圧迫して、流・早産になることがあります。
先天的なものとしては中隔子宮、双角子宮があります。
後天的なものには子宮粘膜下筋腫があります。

③内分泌異常

甲状腺機能亢進や甲状腺機能低下、糖尿病などにかかっている場合、流産のリスクが高まります。
そのため、妊娠の可能性のある方や妊娠を希望する方は、異常がないか検査をすることをお勧めします。

④夫婦染色体異常

夫婦どちらかに均衡型転座(ある染色体がお互いに入れ替わっているが、遺伝子に過不足がない状態)などがあると、染色体に過不足が生じることがあり、流産の原因となります。

⑤原因不明

不育症の検査をしたとしても原因がはっきり分からないケースが6割以上をしめています。

上記のように不育症の原因は、はっきりとわからないものが6割以上を占めています。例えば常時冷えがある、胃腸虚弱、倦怠感、内臓下垂、浮腫みといった症状や体質は、検査では異常値とはなりませんが、着床やそれに続く妊娠継続が難しくなる要因と考えられます。これらの症状や体質を漢方薬で改善することで、妊娠継続し元気な赤ちゃんを出産できる身体にしていく事ができます。

 

2.不育症に繋がっている?漢方薬的アプローチでひも解く

中医学では身体の機能を(肝・心・脾・肺・腎)の五臓に分類します。
五臓の中の「腎」は生命エネルギーの精 (せい)を貯蔵し、成長・発育・老化を司り、ホルモン分泌に影響を与えています。したがって、良質な卵子、染色体異常のない正常な受精卵の発生、胎児の成長・発育は、「腎」の状態に影響されます。
そのため「腎虚」になると生殖機能が低下します。
腎虚の特徴的な症状は

生理以外にも出血が起こることがある
性欲の低下を感じる
トイレが近い、夜間尿がある
足腰の弱り、だるさ、痛みを感じる
生理の量が少ない、経血が濃い紅色をしている、粘度が高い
おりものの量が減ってきた
足腰の弱り、だるさ、痛みを感じる
手足にほてりを感じる
両頬が紅潮している
寝汗をかきやすい
口や喉が渇きやすい

などがあります。

これらの症状がある方は、腎虚が考えられます。

 

東洋医学では、身体の構成要素「気」「血」「水」に分けて考えます。

◆「気」は 体の生命エネルギー の ようなもの

気の作用は身体を温めたり(温煦)ウイルスなどから守ったり(防御)粘膜や皮膚から汗や血液が漏れ出る事を防ぐ(固摂)働きがあります。また血液やリンパの流れ(推動)を調整しています。

◆「血」は身体を滋潤したり 栄養素を運んだり、 ホルモンのバランスに影響

「血虚」になる事で循環血量の不足となり、着床後の影響供給が不足し、妊娠継続が不利に働きます。

◆「水」は 血液以外の液体を表す

「水」が滞った状態を「水滞」や「痰湿」といいます。水が身体の中で停滞してしまう事で、むくみやすくなり、身体が冷えやすくなります。

気血不足になると、

寝つきが悪い、眠りが浅い、夢をよく見る
爪が割れやすい
髪の乾燥、抜け毛が気になる
動悸がする
めまいやふらつきを感じることがある
疲れを感じやすい
風邪を引きやすい
内膜が薄いと言われる

といった症状が出やすくなり不育症の要因と考えられます。

 

 

3.不育症を改善する代表的な漢方薬

腎馬補腎丸(じんばほじんがん)

補腎と補血のはたらきの生薬から構成されている。黄体機能低下や、不正出血、冷え性などの方に適している。

婦宝当帰膠(ふほうとうきこう)

冷えや貧血、胃腸虚弱などの症状がある方に適している。

補中益気湯(ほちゅうえっきとう)

気虚タイプで体力のない方に適している。胃腸虚弱の方の流産予防としても古くから使用されている。

帰脾湯(きひとう)

気血両虚タイプの方に適している。不眠や不安感、動悸などがあり、倦怠感を伴う方に適している。

これらの漢方薬を服用される方の状況にあわせ、組み合わせて服用いただく事もあります。
服用される場合は、専門の薬剤師にご相談ください。

 

4.不育症だったが、漢方で出産できた体験談

41歳

体外受精で移植を7回したが、4回陰性判定、3回は妊娠判定が出たが、7週前後で流産してしまった。

凍結している胚が残り1個になったが、これまで良好胚から移植しているため、次の移植はあまり期待はしていないが、最後の移植なので、出来ることはしたいと、ご相談に来られた。
高校の教師をしていて、仕事のストレスがかなりある。仕事が忙しくなると、疲れているのに寝れない、倦怠感といった症状がでる。妊娠判定は出てほしいが、妊娠しても流産するのではないかとかえって不安になる。

漢方薬を服用開始して、1か月経過し、倦怠感や不眠、冷えなどがかなり改善され、そののちに移植。
妊娠判定が出ました。漢方薬を継続して服用いただき、体調も良くその後も妊娠が順調に進み、元気な赤ちゃんを出産されました。

40歳

移植を8回している。5回は陰性。3回妊娠したが、3回とも流産。不育症の検査では、Th1/Th2高値、抗リン脂質抗体症候群と診断され、移植の時は、タクロリムスや、バファリンが、一緒に処方される。これらの処方薬を服用しても流産してしまう。冷えやイライラ、アレルギー体質などがある為、漢方薬を服用して、妊娠し無事出産したいとご相談に来られた。

漢方薬服用から、4か月後に採卵、移植したが、妊娠したが初期流産。さらに3か月後に移植して、妊娠し、漢方薬を継続服用いただき、無事元気な女の赤ちゃんをご出産された。

5.不育症へのセルフケア、漢方と相乗効果が期待できること

妊娠中や妊活中は何かと神経質になりがちで、ちょっとした身体の変化にも過敏になります。
ストレスがかかると交感神経が優位となり、血管が収縮し、妊娠継続に不利に働きます。できるだけリラックスできる環境を作りましょう。

ストレッチやヨガなど適度な運動は血流改善になるため、習慣化しましょう。
食事は動物性たんぱく質を多くとり、ビタミンやミネラルの補給の為、野菜も適度にとりましょう。日光浴はカルシウムの吸収を助けるため、家にじっとしていないで、散歩やウオーキングをとり入れましょう。
良質な睡眠は良い卵子や精子を作ることに必須です。早寝早起きを習慣にしましょう。身体を冷やすような食べ物や飲み物はひかえましょう。

6.まとめ

流産は一定の割合で妊娠した方におこる事です。主に胎児の染色体異常が原因であり母体側の問題では無いと言われています。しかし中には2回以上流産を繰り返す、不育症の方もいらっしゃいます。せっかくの妊娠という嬉しい出来事が、途中で継続できず、それが母体側の原因であったら、とても残念です。
そのような経験をしないためにも、妊娠前から、赤ちゃんが子宮の中ですくすくと育つ母体の環境を作る事が大切です。漢方薬は身体に優しく、

母児の健やかな妊娠をサポートするはたらきがあります。
不育症や流産でお悩みの方は是非一度ご相談ください。