漢方は妊活に効果があるの?妊活・不妊症によく使われる漢方とその注意点について徹底解説

この記事の監修者
片山智子
漢方薬なごみ堂 / 漢方薬剤師
片山 智子
東京・横浜・札幌などで漢方薬の経験を積んで参りました。 女性薬剤師として、女性ならではのデリケートなお悩みをご相談ください。お身体の状態をよく伺った上で、あなたに合った漢方薬をご提案させていただきます。 なかなか相談できない…などと一人で悩まずに、一度ぜひご来店ください。

妊活をしている人の中には「漢方が妊活に効果があるの?」と思っている人もいるでしょう。

漢方は、自身の持つ自然治癒力を使って妊娠を妨げる症状を改善し、妊娠する力を引き出す手助けをする薬です。

最新医療の力を借りて妊娠するのではなく、なるべく自然な形で妊娠をしたいと思っている人にはおすすめできる妊活方法です。

しかし、漢方薬の種類は多いため自分に合ったものを選ぶのはむずかしいと思っている人もいると思います。

 

この記事では、妊活・不妊症によく使われる漢方の話を中心に、漢方を使った東洋医学での妊活と漢方服用時、効果的な飲み方などについて解説していきます。

妊活・不妊症とは

妊活とは、妊娠を望む男女が妊娠に向けて行う活動のことです。

妊活を始めて間もない男女であれば、なんとか自然に妊娠できないかと思う人は少なくないでしょう。

しかし、健康な男女が避妊をしないで性交しているにもかかわらず1年以上妊娠しないと「不妊」の可能性があります。

不妊の原因は加齢や排卵、婦人科系疾患などさまざまですが、実は男性側に原因がある不妊は全体の半数といわれています。

妊活・不妊症の治療は女性がメインに動く印象が強いかもしれませんが、男性不妊の割合を考えると男性も積極的に参加していく必要があります。

 

妊活・不妊治療には「西洋医学」と「東洋医学」2種類の考え方があります。

ここからは、「西洋医学」と「東洋医学」両方の観点から妊活・不妊治療について解説していきます。

西洋医学における妊活・不妊治療

「基礎体温測定」は西洋医学の妊活方法の1つです。

女性ホルモンによって変動する女性の体の状態を、婦人体温計で毎日測定することで知ることができます。

そして妊娠がしやすい時期である排卵日前後に性交渉をすることで、妊娠成立を目指します。

 

しかし、基礎体温測定とタイミング法で妊娠成立がむずかしい場合は、男女ともに妊娠できない原因がないかを調べていきます。

このように、妊娠できない原因を探って悪い部分を治療していくことが西洋医学の特徴です。

検査には、血液検査や超音波検査から、子宮卵管造影検査、精液検査などさまざまな検査があります。

そこで見つかった問題点を治療して、妊娠を目指します。

 

東洋医学における妊活・不妊治療

東洋医学は「心と体は一体」という考えから、自身の持つ自然治癒力を向上させる治療法です。

妊活・不妊治療においても、自身の自然治癒力を使って妊娠の妨げになる部分を改善し、自身の持つ妊娠する力を引き出すことで妊娠成立を目指します。

西洋医学との大きな違いはからだの悪い部分を見つけて治療するのではなく、体を健康な状態や向かうべき方向に導くために自分の持っている自然治癒力を高めることが治療のメインです。

東洋医学は原因がはっきりしない症状に対する治療を得意とするため、原因不明の不妊症に対しても効果が期待できます。

東洋医学の妊活・不妊治療には漢方が使われることが多いため、次によく使われる漢方について解説していきます。

妊活・不妊症によく使われる漢方を紹介

ここからは、妊活・不妊症によく使われる漢方の紹介をしていきます。

まず、漢方とはどのようなものかについて解説していきます。

漢方の考え方を解説

東洋医学・漢方の考えでは、人の体は「気(き)」「血(けつ)」「水(すい)」の3つで構成されています。

東洋医学・漢方の考えでは、人の体は「気(き)」「血(けつ)」「水(すい)」の3つで構成されています。「気(き)」生命活動のためのエネルギー「血(けつ)」体の中を流れる血液 「水(すい)」体の中を流れる血液以外の液体。この3つがバランスよく存在しており、どれか1つでも不足したり滞ることで バランスが崩れて不調が起きると考えられています。

「気(き)」生命活動のためのエネルギー
「血(けつ)」体の中を流れる血液
「水(すい)」体の中を流れる血液以外の液体

 

この3つがバランスよく存在しており、どれか1つでも不足したり滞ることでバランスが崩れて不調が起きると考えられています。

また漢方には五臓(肝、心、脾、肺、腎)の考え方があり、生殖機能は五臓の中では腎に含まれます。

腎の機能が低下した状態は腎虚(じんきょ)と呼ばれ、腎虚になると男女共に生殖機能が低下し、卵子の老化や精子の老化が始まります。

腎虚は30歳くらいから徐々にすすみ35歳くらいから急速に腎虚がすすみますので、そのために35歳くらいから妊孕性(妊娠する為の力)が落ちるとされています。

そのために高齢不妊の場合は、補腎剤の服用が妊活を成功させる鍵になると言えます。

以下では、「お血」(血の流れが悪い状態)を改善する漢方薬や「腎」の機能を高める効果を有する漢方薬、不妊の治療に用いられることの多い漢方薬を紹介します。

 

桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)

妊活に大切な冷えの改善や、月経異常、月経不順などの婦人科系の悩みに使用される漢方です。

 

これらの症状は、血液にあたる「血」の流れが滞ることで起こると考えられています。

桂枝茯苓丸は、「血」のめぐりをよくすることで症状改善を目指します。

 

芎帰調血飲第一加減(きゅうちょうけついんだいいちかげん)

芎帰調血飲第一加減は血のめぐりを良くする活血剤、血液を補う補血剤、ストレスを流す理気剤などバランスよく配合されていて、冷え性やストレスからの生理不順などに使用されます

 

当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)

当帰芍薬散は、月経異常や冷え性など妊活の妨げになる症状を感じている方に使用される漢方です。

 

生理不順は「血」が不足していること、冷えは「水」のめぐりが滞ることが原因の1つと考えられます。

当帰芍薬散は、「血」のめぐりをよくし「水」を整えることで余分な水分を体から排除するのです。

血のめぐりを良くし、身体の水はけを良くすることで冷えや生理不順の改善を目指します。

加味逍遥散(かみしょうようさん)

妊活をするには、女性ホルモンが整っていることと自律神経のバランスがとれている事も大切です。

加味逍遥散は女性ホルモンのバランスと自律神経のバランスを整えることで、生理不順やイライラ、不眠、冷え性を改善します。

 

ホルモンバランスが乱れることで「気」の流れが悪くなりイライラや不眠となり、「血」が不足することで生理不順が起こると考えられます。

そのため、加味逍散は「気」の巡りを整えること、「血」不足を補うことで症状改善を目指す漢方です。

 

参馬補腎丸(じんばほじんがん)

補腎の働きから、卵巣機能低下や高齢不妊の方などに服用いただきます。

身体を温める補陽薬が多く配合されている為、冷えがあり、疲れやすく、身体がいつもだるいといった方にお勧めです。

 

八味地黄丸(はちみじおうがん)

八味地黄丸は「血」「水」の2つを巡らせることで、体を温め全身の機能低下を改善します。

年齢を重ねると男女ともに生殖機能が低下するため、高齢不妊の方におすすめの漢方です。

性欲低下や勃起障害にも効果があり、男性の妊活・不妊治療としても使われます。

 

補中益気湯(ほちゅうえっきとう)

補中益気湯は、生命を維持するために必要なエネルギーの「気」が不足した状態の人におすすめの漢方です。

疲れやすい、ストレスなどの症状に効果があります。

 

男性の妊活においてストレスは大敵です。

ストレスから性欲低下や勃起不全などを発症することもあり、それらの症状改善のために補中益気湯が用いられます。

漢方の力を借りて妊活期間を乗り切ろう!

漢方は、自身で妊娠する力を引き出すのを手助けする妊活方法。

「なるべく自然な形で妊娠をしたい」と希望する人にはおすすめです。