不妊に悩んでいるカップルはおおよそ10組中1組の確率でいるとされています。
近年その悩みを解決するために漢方薬が有効であることがわかってきており、従来の治療法と併用されることが増えてきています。
この記事では体質改善を図り妊娠をサポートするために使用される漢方と養生方法を紹介します。
不妊とは
不妊とは、日本産婦人科学会で「生食年齢の男女が妊娠を希望し、避妊することなく1年間通常の性交を行っているにも関わらず妊娠に至らない状態」のことを定義しています。
女性は加齢とともに妊娠率が低下していくことがわかっており、晩婚化が進む日本では第15回出生動向調査によると3組に1組以上の夫婦が不妊を心配したことがあるというデータが報告されています。
不妊の原因
不妊の原因は以前は女性が原因であると認識されていましたが、現在WHOの報告では男女ともに不妊の原因となる理由があると発表されています。
不妊の原因は数多くありますが、今回は一例を紹介します。
①男性が原因の場合
・遺伝的な問題
・後天的な問題
男性の不妊の原因は2つに分けられます。
遺伝的な問題では精子がうまく作られなかったり、運動機能が弱いことが原因で不妊になることがあるとされています。
また精子は作られているが、精子が通る道の精管が形成されていないことによる先天性精管欠損症なども原因の1つです。
後天的な原因としてはストレスやプレッシャーなど精神的なバランスが崩れてしまうことによる勃起不全や早漏など性機能の問題が挙げられます。
➁女性が原因の場合
・卵子の老化や排卵障害
・卵管や子宮の異常
・免疫の異常(抗精子抗体)
女性不妊の原因の1つが卵子の老化や排卵障害によるものです。
女性が一生のうちに排卵できる卵子の数は400~500個と決まっていますが、加齢に伴い卵子の数が減り、同様に質も低下していきます。
またストレスがかかることで脳の下垂体や視床下部からのホルモンの分泌がうまくいかないことや、卵巣機能低下による月経不順も不妊の原因です。
さらに子宮筋腫や先天的に子宮の形が異常であるために妊娠しにくいケースや、精子の運動を止めてしまうような抗体が体のなかにあると受精ができないこともあります。
不妊治療について
実際に病院では不妊治療がどのように治療をされているのでしょうか。簡潔にまとめて紹介します。
タイミング法:排卵日を予測して妊娠の可能性が高いときに性交渉をする方法です。
人工授精:排卵日の付近に精液中の運動機能の良い精子を子宮空内に入れる方法です。
ホルモン療法:排卵誘発の薬を使用することで卵巣機能を改善する方法です。
体外受精:卵巣から採取した卵子と精子を培養液中で受精させて、受精卵を子宮に戻す方法です。
不妊治療は年齢や不妊のステージの状況により病院で行う治療法の選択が異なります。
東洋医学における不妊の考え方とは
東洋医学では、体の成り立ちや病気のメカニズムに気・血・水が重要視されており、3つの要素のバランスをとることを目的にしています。
気・血・水とは、私たちの体の中で次のような働きをしています。
「気」は、人間の活動のエネルギーのことをさします。
「血」は、各臓器や組織に栄養を送る血液をあらわします。
「水」は、全身を潤す体液のことをあらわします。
この3つの循環がすることで私たちの健康が保たれているのですが、バランスが崩れることで体に不調が出てきてしまいます。
また漢方には五臓(肝、心、脾、肺、腎)の考え方があり、生殖機能は五臓の中では腎に含まれます。
腎虚になると、男女共に生殖機能が低下し、卵子の老化や精子の老化が始まります。
腎虚は30歳くらいから徐々にすすみ35歳くらいから急速に腎虚がすすみますので、そのために35歳くらいから妊孕性(妊娠する為の力)が落ちるとされています。
病院で治療をする場合も卵子の老化が原因で上手く治療がすすまないという方が多いです。
そのために高齢不妊の場合は、補腎剤の服用が妊活を成功させる鍵になると言えます。
人によって体質や症状を総合的に評価した証というものが異なるため、同じような悩みでも使用される漢方薬が異なるのが東洋医学でのアプローチ方法です。
不妊症に使われる漢方薬と効果
漢方薬で行う不妊治療は先ほど述べた西洋医学の治療方法と対立するものではありません。
不妊の理由は1人1人によって原因が異なるので、身体の問題点を見つけて体質改善を図ることで妊娠しやすい身体へと整えるために一緒に併用される機会が多いです。
次に不妊症で使われることの多い漢方薬について紹介します。
芎帰調血飲第一加減(きゅうちょうけついんだいいちかげん)
芎帰調血飲第一加減は血のめぐりを良くする活血剤、血液を補う補血剤、ストレスを流す理気剤などバランスよく配合されていて、冷え性やストレスからの生理不順などに使用されます。
参馬補腎丸(じんばほじんがん)
補腎の働きから、卵巣機能低下や高齢不妊の方などに服用いただきます。
身体を温める補陽薬が多く配合されている為、冷えがあり、疲れやすく、身体がいつもだるいといった方にお勧めです。
当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
当帰芍薬散は不妊治療を行う場合に選ばれることが多い漢方薬です。
主にむくみや貧血がある女性に使われます。
6つの生薬で成り立ち、この漢方薬は気血水のうち血の巡りを改善する働きがあります。
この漢方の名前にも入っている、当帰や芍薬で血を補い体を温め、沢瀉や蒼朮/白朮で体の水分を調節を行います。
さらに女性ホルモンのバランスを整えて、血行を改善し生理周期を整えることで妊娠しやすい体づくりをサポートします。
温経湯(うんけいとう)
体を温めて、ホルモンバランスを整えることを目的に使うことが多い漢方薬です。
血を巡らせる当帰、芍薬、川芎や、体温をあげて冷えを改善する生姜や阿膠が含まれています。
子宮の状態を正常にする働きがあるため不妊治療に用いられます。
桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
血の流れがうっ滞している人「瘀血」のタイプに使われる漢方薬です。
血が滞っていると子宮筋腫や子宮内膜症のリスクが高まります。
血行不良による冷えや女性ホルモンのバランスが崩れることで卵巣が冷えてしまい結果、不妊体質になりやすいです。
桂枝茯苓丸に含まれている桂枝は体を温め、桃仁は血液循環を改善します。
さらに牡丹皮や茯苓など複数の生薬によって体の血液や水分の循環の手伝いを行うことで妊活のサポートをします。
加味逍遙散(かみしょうようさん)
精神的なストレスや不安感が多いことが原因で不妊症になっている人に使われる漢方薬です。
加味逍遙散に含まれている柴胡や山梔子、牡丹皮などは神経の高ぶりを抑え精神を安定させる作用があります。
当帰や芍薬は血流を改善し冷え性や、生理周期を整える働きを持ちます。
柴胡は肝臓の機能にも大きくかかわり肝機能の高めることでホルモンバランスの改善にも影響しています。
血と気の巡りを整える薬として、冷えやストレスを改善したい人に用いられる漢方薬です。
補中益気湯(ほちゅうえっきとう)
補中益気湯は、体力を補う漢方薬として有名ですが男性が不妊の原因になっている場合に使用されることもあります。
精子の数や精子の運動能力は男性ホルモンのテストステロンが関わっていますが補中益気湯は活性が高いテストステロンを上昇させるという研究報告がされています。
また体を温め胃腸機能も回復させることから妊娠しやすい体質へ改善していくサポートをする漢方薬です。
不妊体質を改善するために!日常生活で気を付けること
漢方薬は体質改善をはかり自己治癒力を高めることで体の不調を治していくお薬です。
しかし、漢方薬の効果を最大限に引き出すためには日常生活での養生も大切な部分となります。
ここでは養生のポイントについて紹介します。
お腹を冷やさない
女性ホルモンは血管の収縮や拡張にも関わっているためホルモンの分泌が悪いことで血流が悪くなり、卵巣や子宮が栄養不足に陥ってしまいます。
その結果、卵子が育たなくなったり排卵や着床が阻害されてしまう状態になってしまいます。
お腹をひやさないためには、大根や人参などの野菜やショウガなど体を温める食べ物を意識的にとるようにしたり、ウォーキングやランニングなど軽い運動をすることで全身の血行をよくすることもおすすめです。
カフェインやアルコールを摂りすぎない
アルコールやカフェインはホルモンバランスを崩してしまいます。
女性ホルモンのバランスが崩れることで排卵がうまくいかなかったり、月経不順が起こりやすくなります。
アルコールの取りすぎは女性では卵巣機能を低下させ、男性は精子の質や運動能力を落としてしまうという報告もされています。
またカフェインはストレスホルモンの分泌を増やすだけでなく、流産のリスクを増加させる可能性があるとも言われています。
そのため、妊娠を考えている間は過剰な飲酒やカフェインの摂りすぎは控えるほうが安心です。
まとめ
不妊の体質改善で漢方薬を使用する機会が増えてきましたが、その人の体質によって選択される漢方薬は異なります。
また、漢方の効果を最大限に引き出すためには日常生活でも養生が大切です。
体質改善をしたい方はカウンセリングを行っている漢方薬局にご相談下さい。