不妊症の改善のため漢方の利用を検討している方も多くいらっしゃると思います。
知識がないため気になるけれど、かかりつけの産婦人科にはなかなか相談しづらいという方や誰に相談したら良いかも分からない方がいるかもしれません。
今回の記事では漢方薬を活用した妊活において気になる点や相談をいただくことが多い点についてまとめました。
①不妊とは
(1)不妊とは
不妊とは、日本産婦人科学会では「妊娠を望む健康な男女が避妊をせず性交をしているにもかかわらず1年妊娠しない状態」と定義しています。
日本において、不妊のカップルは約10組に1組の割合で存在すると考えられています。
近年では、妊娠を考える年齢が上昇していることから、さらに高い割合で不妊に関して悩んでいるカップルが存在していると考えられています。
(2)不妊の原因
不妊の原因は男性側に原因があるパターンや、女性側に原因があるパターン、あるいは男女両方に原因があるパターンがあります。
男性側に原因がある場合は勃起障害(ED)、膣内射精障害といった性機能障害と精子が作られない造精機能障害などの身体的な要因が主なものです。
また、妊活によるストレスやプレッシャーなど心因性の理由もあります。
女性側に原因がある場合は排卵障害、卵管、子宮頸管、子宮、免疫系など様々です。
子宮筋腫や子宮内膜症などの病気が関わっているケースや、ホルモンの分泌が関わっているケースなども考えられます。
上記のように原因が明確な場合もあれば、不明なこともあります。
(3)不妊の治療
不妊の治療をするためには、不妊の原因を知ることが必要です。
不妊の原因が判明したら、その原因ごとに治療を行います。
不妊治療は大きく分けると3つのステップに分かれております。
ステップ1「タイミング法」
最初のステップとして、妊娠の可能性が高いと考えられる時期に性交渉をもつタイミング法と呼ばれる方法を実施します。
ステップ2「人工授精」
タイミング法で結果が得られなかった場合、排卵する可能性の高い日に精液を採取して、人工的に子宮内に注入する人工授精と呼ばれる手法を実施します。
ステップ3「体外受精」「顕微授精」
人工授精によっても結果が得られない場合は、女性の卵子を取り出し、パートナーの精子を受精させ、受精卵を培養して子宮に戻す体外受精という手法を実施します。
検査をおこなっても原因が分からない場合はタイミング法の実施から、人工授精の実施、体外受精の実施に至るまで、妊活をステップアップしていきます。
②不妊は漢方で改善できる
(1)漢方薬を用いた不妊治療
漢方は不妊症の治療に用いられることも多く、不妊の悩みや気になる症状の改善に期待することができます。
不妊治療をする場合は西洋医学に基づいた薬剤と東洋医学に基づいた漢方薬を組み合わせて処方されることが多くあります。
不妊治療を医療機関で受けながら、漢方薬も一緒に服用したい場合は漢方専門の薬局に相談することをおすすめします。
(2)漢方薬の効果・効能
漢方薬は、辛い生理痛や生理不順の改善、基礎体温を整えるなど、妊娠をするための身体の準備を補助するために用いられることが多くあります。
また、冷え症の症状が改善したり、皮膚や髪の艶が良くなったりと、女性として嬉しい効果も期待できます。
③妊活中に服用をおすすめする漢方
妊活中に漢方を服用する場合には、自分の身体で気になっている症状や、なんとなく感じている不調、排卵障害やその他、病気の有無に合わせて漢方薬が選択されます。
妊活中に服用をおすすめされることが多い漢方薬は次の通りです。
(1)当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
当帰芍薬散は「血」を整える効果が期待できるもので、冷えに悩んで相談される方におすすめされることが多い漢方です。
漢方の考え方では、特に子宮に血が足りないと、生理不順になったり、月経血が減ってきます。
また利水効果があるため、むくみによる、冷え性改善の効果もあります。
(2)加味逍遥散(かみしょうようさん)
東洋医学では月経、妊娠、出産、産後、更年期など女性のホルモンの変動に伴って現れる精神不安やいらだちなどの精神神経症状や、頭痛、のぼせ、めまい、月経異常などの身体症状のことを「血の道症」と呼んでおり、加味逍遥散は血と気の巡りを整えて、血の道症の改善のため用いられることが多い漢方薬です。
妊活中は早く妊娠したいという思いから、不安やいらだちを感じることも多いかもしれません。
ストレスを感じると脳の視床下部が影響を受けやすく、排卵にも関係する場所であるため、ストレスが原因で排卵が遅れる可能性も高まります。
加味逍遥散はこうした精神不安やいらだち、気分の変動に対して効果を発揮します。
(3)婦宝当帰膠(ふほうとうきこう)
妊娠には十分な気と良質な血が必要であると考えられています。
気と血が消耗した状態を東洋医学では「気血両虚」と呼んでおり、この状態では子宮や卵巣への栄養が乏しくなると考えられています。
気血両虚の状態では質の良い卵子が育ちにくくなったり、子宮内膜が薄くなったりと不妊につながる状態が見られるといわれています。
婦宝当帰膠は補気補血を行い、気血両虚の改善が期待できる漢方として用いられています。
(4)柴苓湯(さいれいとう)
柴苓湯はステロイドホルモンと同じような作用機序があることが確認できています。
そのため過剰免疫を調整する働きから、不育症や、着床障害の方に服用いただきます。
(5)冠元顆粒(かんげんかりゅう)
下腹部の血行が悪いとお血状態となり古い血液が子宮内に溜まりやすくなり、不妊の原因となります。
お血状態とは血液が流れにくくなり、体の中に滞ってしまうことで起こる状態のことを指しています。
冠元顆粒は血の流れを整え、古い血液を体外へ排出しやすくなるため良好な子宮の状態を保つことに効果を発揮するとされています。
④妊活中、薬局によくある漢方の相談
不妊の様々な症状に対して効果が期待できるとされる漢方薬ですが、馴染みがないこともあり、薬局にてご相談をいただくことも多くあります。
よくいただく質問や相談についてご紹介いたします。
(1)漢方薬局で出される漢方薬と病院で出される漢方薬の違い。
漢方薬は本来、体力の有無や熱寒の偏りなどの体質と症状によって選定され、同じ病気でも異なる漢方薬が使われたり(同病異治)、逆に異なる病気でも同じ漢方薬が使われる(異病同治)ことは多分にあるものなので、保険適用内では使用できる漢方薬の種類も病気もかなり制限されてしまう可能性がある点については留意する必要があります。
(2)男性不妊も漢方薬で改善できますか?
男性不妊も漢方薬での改善が見込め、八味地黄丸(はちみじおうがん)については服用後3ヶ月時点で精子濃度と運動率の改善が認められているデータもあります。
また動物生薬を使った、蟻製剤など、運動率や奇形率の改善に期待ができます。
他にも女性と同じく症状に合わせて漢方薬が用いられています。
女性の症状に対しての効果を紹介されることが多い漢方薬ですが、男性の症状に合わせた漢方薬の処方も可能ですので、薬局にてご相談いただくのがおすすめです。
(3)漢方薬と処方薬の併用はできますか?
漢方薬と医療機関で処方された薬との併用は可能です。
しかし、もしも市販で購入した漢方薬を処方薬と一緒に服用することが不安であれば、かかりつけ医やかかりつけ薬局へ相談することをおすすめします。
⑤まとめ
不妊症の原因は様々で、検査で原因不明の場合も多くあります。
原因不明の場合であっても漢方薬を服用することで妊娠につながるケースが多くあります。
月経周期や、生理痛のあるなし、卵巣機能の状態などによって、改善の為の漢方薬は違ってきますので、漢方薬専門の薬局に相談することをおすすめします。