目次
①不妊症の定義と原因
この記事では妊活中の方に向けて不妊治療に効果が期待できる漢方をご紹介します。
妊活に取り組んでいる方の中には漢方薬の服用を検討されている方もいるのではないでしょうか。
期待した効果を得るためには、利用する方それぞれの体質に合った漢方薬を選ぶ必要があります。
また、漢方薬と生活習慣の改善を合わせて行うことで、効果が高まり、妊娠しやすくなる可能性があります。
漢方の利用と基本的な生活習慣の改善は妊活において重要なことですので参考にしてください。
(1)不妊症の定義
「もしかしたら不妊症かもしれない」
「結婚して生活していれば自然と授かるものだと思っていた」
このように、悩んでいる方がいるかもしれません。
不妊症とは、妊娠を望んでいる健康なカップルが自然な性生活を送っていても1年以上妊娠に至らない状態をいいます。
現代では約10組に1組の夫婦が不妊症で悩んでいるといわれており、検査や治療を受ける人が増えています。
(2)不妊症の原因
研究によって、不妊症の原因が明確になっていることもあれば、原因がわかっていないこともあります。
原因が明確であれば薬物療法で改善するケースもありますが、原因が明確ではない場合は、様々な治療を試していくこととなります。
不妊の原因は男女によって大きく異なるため分けてご説明します。
・女性側の不妊の原因
女性側の不妊の原因としては、排卵障害や卵子の老化が原因とされるケースが多くあります。若い方に多いのは多嚢胞性卵巣症候群による排卵障害です。高齢不妊の方は、
卵子の老化が、不妊の原因の多くを占めます。
加えて、生活習慣の乱れによる冷えやむくみ、睡眠不足や過労も不妊を招いている可能性があるとされています。
不妊症は検査で原因がはっきりしないこともあるので、単純ではありません。
・男性側の不妊の原因
男性側の不妊の原因としては、射精障害や精子の異常が原因とされるケースが多いです。
加えて、女性と同様に生活習慣の乱れや加齢により、生殖機能が低下していることが原因となっている恐れもあります。
不妊治療では女性側の原因が取り上げられることが多くありますが、割合としては半々となりますので男性側の意識や治療への取り組みも非常に大切です。
・その他の原因
男女ともに年齢が高ければ高いほど妊娠しづらい傾向にあります。
最近では社会の変化に伴い、結婚する年齢が上がっており、出産の時期も遅くなっています。
特に35歳以上の夫婦であれば、不安を感じた場合、早めに対策をとる事をおすすめします。
②漢方薬について
不妊の症状に対して漢方薬が効果を発揮したというケースが多くあり、妊活に漢方を利用される方が増えています。
ここでは漢方薬について簡単にご説明します。
(1)漢方薬とは
漢方薬とは、さまざまな生薬を混ぜて効果を発揮する薬です。「生薬」とは植物の葉、茎、根などや鉱物、動物のなかで薬効があるとされる一部分を加工したものです。
長い歴史の中で様々な組み合わせが研究され今の処方が確立されています。
漢方薬といえば、咳や鼻水、足のつり、痛み、皮膚症状などさまざまな症状に対応した漢方薬の処方を受けたことがある方も多いのではないでしょうか。
(2)漢方薬の特徴
特性として、長く飲んで効果を発揮するものから即効性があるものまでさまざまな種類があります。
女性向けの漢方薬には生理痛や月経不順、更年期障害、イライラや冷えなどの症状に効果を発揮するものもあります。
③不妊症の治療に漢方は効く
不妊症の治療に漢方薬が効果を発揮することがあるとして、利用する方が増えています。
(1)東洋医学の考え方
東洋医学の考えでは「気(き)」「血(けつ)」「水(すい)」のバランスを整えることで健康を維持できると考えられています。
3種のバランスから見ると不妊症は「血」の部分での血流が滞り、冷えや胃腸機能の低下が原因となっていることが多いと考えられています。
また、ストレスが原因で「気」の巡りが滞っていることも不妊の理由としてあげられます。
東洋医学では人間の機能を五臓(肝、心、脾、肺、腎)に分けると、腎は成長、発育、生殖にかかわる機能です。そのため腎虚になると生殖機能が落ちてきます。腎虚は卵子や精子の老化の原因になります。
腎虚がすすむと、不妊治療や妊活を頑張っても、なかなか結果が出ないという事があります。そういった方は漢方薬で補腎していく事で腎虚を改善し、妊娠しやすい身体作りをしていきます。
上記のように不妊の原因となる症状に対して漢方薬が効果を発揮できる部分があるとして利用する方が増えています。
(2)漢方を利用する場合
ドラッグストアやネットで購入することもできますが、自己判断で飲み始めるよりも信頼できる漢方薬局で生理周期や生理痛、オリモノの状態、治療歴などを詳しく相談し服用することが望ましいです。
④不妊症治療によく処方される漢方
不妊症の原因となる症状に効果を発揮することがあるとされる漢方薬ですが、不妊の症状に対してよく取り上げられる漢方について一部をご紹介します。
婦人科で処方されることもある代表的な漢方薬です。
(1)芎帰調血飲第一加減(きゅうきちょうけついんだいいちかげん)
血流を改善する活血剤、血液を補う補血剤、ストレスを上手く流していく、理気剤、
がバランスよく配合されています。
ストレスによる生理不順や、多嚢胞性卵巣症候群の方に適しています。また胃腸を整える補気剤も配合されているため、胃腸の弱い方でも安心して服用いただけます。
(2)芎帰膠艾湯(きゅうききょうがいとう)
血液を補う補血剤と、不正出血の改善の止血の働きの漢方薬が配合されています。
貧血傾向にある方や、生理前にいつも少しの出血があって生理が始まる、黄体機能低下の方の改善に使用される漢方薬です。
(3)桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
東洋医学の考え方では、血行不良の状態を瘀血(おけつ)と呼びます。
桂枝茯苓丸は瘀血の状態を改善して、血流を良くすることで、身体の冷えをとり、状態を整える効果があるとされており、月経不順の改善にも効果があるとされています。
血行不良がみられる方におすすめされることが多い漢方薬です。
(4)当帰芍薬散 (とうきしゃくやくさん)
当帰芍薬散は東洋医学における「水(血液以外の唾液・汗・リンパ液などの水分)」を整える役割があります。
むくみや冷えの改善を目的として処方される場合が多い漢方で桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)とは違い、体力虚弱で貧血傾向の方におすすめされることが多い漢方薬です。
(5)加味逍遙散 (かみしょうようさん)
加味逍遙散は瘀血の改善の他に「気」の巡りをよくして精神的な不安定さやイライラを改善する働きがあります。
ホルモンバランスの変化によって、精神的に不安定な症状が出る方におすすめされることが多い漢方薬です。
⑤使用に注意が必要な漢方薬
効果効能が妊活に向かないものもあるため、利用の際にご注意いただきたい漢方もあります。服用の際は漢方専門の薬剤師に相談して服用することをおすすめします。
⑥漢方薬の利用に関して心配されること
漢方薬を利用するにあたって、相談されることの多い不安点をご紹介します。
今後利用を検討しておられる方はご参考ください。
(1)飲みにくい「味」ではないか
漢方薬を初めて処方されるとき、味についてのご質問を受けることが多くあります。飲みにくいのではと心配される方も多くいらっしゃるでしょう。
漢方薬は味が独特なものや期待する効果を得るために飲む量が多いものもあります。
顆粒状のものや、錠剤、シロップ状で飲みやすいものもが多くありますので、
処方される際に薬剤師に聞いてみてください。
(2)費用
費用に関して心配される方も多くいらっしゃいます。
服用いただく漢方薬によっても値段が違いますので、御予算面のご相談にも
のれますので、安心してご相談下さい。
漢方薬のお値段のおおよその目安。
粉薬1日分330~770円、煎じ薬1日分440~770円、
錠剤1箱4500円~6000円(約半月から1か月分)
⑦漢方薬の効果を高める体質改善の方法
漢方薬は症状の改善に効果を発揮することもあるとされていますが、当然日々の生活習慣が妊娠のためには重要です。漢方薬の効果を高めるためにも、生活習慣において特に重要な3つのポイントについてお伝えします。
(1)体をあたためる
女性にとって「冷え」は不妊の原因になるとされています。
入浴時には湯船に浸かる。冷たい飲み物は頻繁に飲まないようにする。料理に体をあたためるショウガを取り入れるなど、日々の小さな心がけが大事になります。
夏場は特に冷たいものを飲む機会が多くなったり、冷房の効いた部屋で生活することが多くなったりしがちです。
体を冷やしすぎないように注意しましょう。
(2)良質の睡眠をとる
睡眠不足は体調不良の原因になります。
中医学では夜寝ている時に卵子の成長が行われていると
考えられています。
ついスマートフォンを長々と見てしまうといった生活は、
あまり良くありません。
10時には寝る準備に入り、11時には就寝できるように心がけましょう。
(3)ストレスを減らす
大きなストレスを抱えて生活をしている人も多いのではないでしょうか。
仕事での人間関係や日々の生活において、ストレスを感じる機会も多くあるでしょう。
妊活を行うにあたっては、出来るだけストレスを感じる機会を減らすよう意識することも大事なことです。
当然ストレスを0にすることは難しいため、解消していくことが重要です。
軽い運動はストレス軽減の効果があるのでウォーキング程度からはじめて見ることがおすすめです。
(4)バランスの良い食事を摂る
十分な栄養を摂ることは妊活にとって非常に重要です。
ファストフードなどの食事が多くなると、ビタミンミネラルが不足し、糖質に偏った食事になり摂取する栄養のバランスが崩れます。
バランスの悪い食事は体重増加の原因にもなるため、3大栄養素である「炭水化物」「タンパク質」「脂質」をバランスよく摂ることを意識して食事をすることが大事です。
⑧まとめ
この記事では、妊活中の方に向けて漢方薬の効果についてご紹介しました。
明確な原因が分からない不妊の症状に、漢方薬の効果が期待できるものもあるとして利用される方が増えています。
さらに、生活習慣の改善と合わせて取り組むことで不妊症の改善につながる可能性も高まります。
漢方薬を服用する場合は漢方専門の薬剤師に相談しましょう。