「不妊治療費用も医療費控除の対象って本当?」
「薬局で購入している漢方薬費用も大丈夫かな?」
と考えている方もいるのではないでしょうか。
不妊治療で支払った費用は、医師が処方した薬以外の漢方薬でも医療費控除の対象になります。令和4年4月から始まった、不妊治療への健康保険適用で、不妊治療の経済的負担は変化しました。
この記事では、医療費控除の対象になる不妊治療費用、不妊治療の医療費控除についての注意点、不妊治療の費用を軽減する方法について、解説します。この記事を読むと、不妊治療の費用負担を軽くする方法が分かります。
目次
不妊治療に使う漢方薬は医療費控除の対象になる
ここでは、不妊治療費の医療費控除について、解説します。
医療費控除とは
医療費控除とは、その年に一定の基準を超える医療費を支払った場合に、所得税控除が受けられる制度のことです。医療費控除の金額は、次の式で計算できます(最高200万円)。
実際に支払った医療費の合計額-①の金額-②の金額
①保険金などで補填される金額
②10万円(総所得金額などが200万円未満の場合は、総所得金額などの5%金額)
保険金などで補填される金額は、健康保険などで支給される出産育児一時金・高額療養費・家族療養費や生命保険契約などでもらえる入院費給付金などを指し、給付の目的となった医療費を限度として差し引いて考えます。
確定申告時に医療費控除に関する事項や必要事項を記載した確定申告書を提出すると、税金(所得税や住民税)負担を軽減できる可能性があります。
「参考:国税庁|No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)」
医療費控除の対象になる不妊治療費
不妊治療費の対象になるのは、病院医師の診療などによる人工授精などの費用や医薬品の購入、通院に必要な交通費などです。具体的には以下のとおりです。
【医療費控除の対象となる不妊治療の費用一覧】
- 人工授精や体外受精、顕微受精の費用
- 医薬品の購入費用
- マッサージ指圧師や鍼師、柔道整復師の施術費用
- 通院のための交通費
- 診療情報提供書(紹介状)
日本生殖医学会が取りまとめた「生殖医療ガイドライン」等を踏まえ、不妊治療は令和4年度より保険適用となりました。ただし、年齢制限や回数制限もあるので、注意してください。保険診療として認められなくても、医師が患者の状態等に応じて実施される場合は、「先進医療」となり、保険外診療となります。先進医療を受けた場合にも医療費控除の対象となります。
医師から処方された薬以外でも医薬品、例えば不妊治療のために購入した漢方薬も医療費控除の対象です。妊娠しにくい体質改善のためのマッサージや鍼治療などの施術費用、通院のための交通費、転院する際の情報提供書(紹介状)も該当します。詳しくは所轄税務署にご確認ください。
支払った医療費の領収書から「医療費控除の明細書」を作成して、確定申告書に添付することになっているので、領収書などは大切に保管しておきましょう。医療保険者から交付された医療費通知がある場合は、それを添付すれば、明細書への記載を簡略化できます。なお、医療費の領収書は確認の必要のため、確定申告期限などから5年間、保存しなければなりません(医療費通知を添付したものは除く)。
「参考:国税庁|No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)」
「参考:国税庁|No.1122 医療費控除の対象となる医療費」
「参考:国税庁|質疑応答事例 漢方薬やビタミン剤の購入費用」
「参考:厚生労働省|先進医療の概要について」
医療費控除の対象にならない不妊治療費
医療費控除の対象にならない不妊治療費の例は以下のとおりです。
【医療費控除の対象にならない不妊治療費の例】
- 里帰り出産時に実家へ帰るための交通費
- 入院中の差額ベッド代
- 排卵検査薬や妊娠検査薬などの費用
- 妊活サプリや健康増進のための食品の費用
- 妊活セミナーやマタニティビクス、マタニティーヨガの費用
- 通院のためのタクシー代
- 自家用車で通院する場合のガソリン代や駐車場の料金
医療費控除の対象となるものは、医師の診療などを受けるために通常必要なものに限られます。里帰り出産や差額ベッド料金など自己都合によるものは対象外です。
電車やバスなどの公共交通機関が利用できない場合を除きタクシー代や、自家用車で通院する場合のガソリン代・駐車場料金などは、控除の対象ではありません。公共交通機関を利用した場合、領収書はいりませんが、利用した日付や金額は正確に記入しなければならないので、家計簿へのメモなどで備えましょう。定期券がある場合は、該当期間料金は対象外です。
「参考:国税庁|お産のために実家へ帰る旅費」
「参考:国税庁|差額ベッド料」
「参考:医療費控除のよくある質問」
不妊治療の医療費控除についての注意点2つ
ここでは、不妊治療の医療費控除についての注意点を解説します。
夫婦の費用は合算して申告できる
医療費控除は、生計を共にしている妻(夫)やその他の親族など家族に関係のある医療費を支払った場合に適用され、配偶者やその他の親族の所得についての金額要件はありません。したがって、共働きの場合でも合算して支払っても問題ありません。
夫婦どちらでも申告できますが、どちらも200万円以上の課税所得がある場合は、所得金額の多い方で申告した方が税率も高いのでお得です。
医療費控除を受けるには治療を受けた翌年に確定申告する
医療費控除を受けるには、治療を受けた翌年(2月16日から3月15日までの間)に税務署へ確定申告しましょう。期限内に忘れた場合も、気が付いたらなるべく早く申告するようにしてください。会社員など給与所得者で確定申告の必要がない人(還付申告)の場合は、5年間さかのぼることが可能です。令和6年分については、令和7年1月1日から令和11年12月31日まで申告できます。
「参考:国税庁|【確定申告・還付申告】」
不妊治療の費用を軽減する方法4つ
ここでは、不妊治療の費用を軽減する方法を紹介します。
高額医療費制度を活用する
高額医療費制度とは、医療費の家計負担が重くならないように、医療機関や薬局の窓口で払う医療費が上限額を超えた場合に、加入している健康保険組合が超えた額を負担する制度です。上限額は年齢や所得によって定められており、条件を満たすことで、さらに負担を軽くするしくみもあります。実際の窓口での支払い負担を上限額までに抑えるには、加入している医療保険組合から「限度額適用認定証」または「限度額適用・標準負担額減額認定証」の交付を受け、窓口で提示する必要があります。
助成金制度を利用する
不妊治療費助成制度とは、不妊治療中カップルの経済的負担の軽減を目的として、要した医療費の一部を助成する制度です。対象者や助成金額、必要提出書類などは自治体によって異なります。
医療保険に加入する
民間医療保険に加入することで、不妊治療費用が軽減できる場合があります。人工授精などを受けた場合に給付金を受け取れる特約のほか、切迫流産や帝王切開などに使えるものもあります。出産や妊娠を考えている場合には検討してみてもいいかもしれません。
勤務先の健康保険組合や福利厚生制度を活用する
厚生労働省では「不妊治療と仕事との両立」に取り組む会社を認定する「くるみんプラス」等の制度を新設し、不妊治療を受けていても働き続けられる職場環境の整備を目指しています。それに伴い、不妊治療を応援する企業も増えてきています。不妊治療のための休暇や休職制度、治療費の助成金などを設けている企業もあるので、勤務先の健康保険組合や福利厚生の制度を確認してみましょう。
まとめ|不妊治療も医療費控除の対象?漢方薬の費用もある方のために徹底解説!
この記事では、医療費控除の対象になる不妊治療費、不妊治療の医療費控除についての注意点、不妊治療の費用を軽減する方法について、解説してきました。
不妊治療で支払った費用は、医師が処方した薬以外の漢方薬でも医療費控除の対象になります。確定申告や還付申告には領収書の添付が必要なので、購入した場合には大切に保管しましょう。