この記事では、不妊についての漢方の考え方、五臓の考え方、腎と漢方、漢方でみた男女別の不妊の原因について、解説します。この記事を読むと、漢方薬が不妊に効果がある理由が分かります。
目次
不妊についての漢方の考え方
漢方では、健康とは、身体を構成する基本の「気(き)」「血(けつ)」「水(すい)」が全身を過不足なく巡っていて、「五臓(ごぞう)」がバランスよく働いている状態のことを言います。
気・血・水とは
基本の気・血・水とは以下のようなものです。
【気・血・水の働き】
要素 | 働き | |
気 | エネルギー | 身体を動かす原動力、身体を温める力、免疫など身体を守る力 |
血 | 血液 | 体の臓器や組織に栄養を与えて機能を円滑にする |
水 | 汗やリンパ液などの血液以外の水分 | 身体を潤す、潤すことでほてりや熱感をしずめる |
気・血・水のバランスが崩れてしまうと、以下のように、不健康な状態になります。
【気・血・水のバランスが崩れた、不健康な状態とは】
要素 | 不足した状態 | 滞った状態 |
気 | 気虚(ききょ):エネルギー不足で疲れやすい | 気滞(きたい):イライラする |
血 | 血虚(けっきょ):栄養不足 | 瘀血(おけつ):痛みがでやすい |
水 | 陰虚(いんきょ):皮膚乾燥・便秘などになりやすい | 水滞(すいたい):むくみ・下痢などが起こりやすすい |
健康な状態に戻すには、不足したものを補ったり、滞りを解消したりする必要があります。
五臓とは
五臓は「肝」「心」「脾」「肺」「腎」のことを指します。
五臓の中の腎の考え方と、西洋医学の腎臓とは全く別で西洋医学のように独立した臓器の事ではなく、お互いに協力して、気・血・水を生成・貯蔵し、バランスを整えて、心身の健康な状態を維持している機能と考えます。
【五臓の働き】
五臓 | 働き |
肝 | 自律神経や情緒などをコントロールする。 気の流れをスムーズに流れるように調整する機能 血を貯蔵して栄養にする機能。 |
心 | 精神や意識をコントロールする。他の臓器へも影響する。 |
脾 | 心拍を通じて、血液を全身に送る。他の臓器へも影響する。 飲食物を消化吸収し、気・血・水を作り出す。四肢や筋肉などにも影響が及ぶ。 |
肺 | 気と呼吸をコントロールして、気や津液を全身にめぐらす機能。 |
腎 | 発育や成長、生殖に関係している。 |
五臓のなかでも月経や妊娠に深く関係しているのは、腎・肝・脾です。
妊娠に最も大切なのは腎
腎・肝・脾の中でも、妊娠に最も大切なのは腎です。
五臓の中の腎のはたらきが弱い状態を腎虚といい、
妊娠力を高めるためには腎虚の改善が大切です。
腎のエネルギー源を「腎精」という名前で呼ぶ場合もあります。腎精は発育と成長、生殖に深い関りがあります。人間の歯が生え変わったり、髪が伸びたり、そして思春期に生理が始まり生殖可能な状態になるのも、腎精の働きのためです。言いかえると、月経や妊娠、出産に重要な働きを担当しているのが、腎であり、腎精なのです。
したがって、妊娠や出産を希望する場合は、腎の機能に問題がないかどうか確認し、十分でない場合には補充しなくてはなりません。
腎虚と漢方
腎精の種類
腎精には、親から受け継いだ「先天(せいてん)の精」と、自分が摂取した飲食物を消化・吸収して生成した「後天(こうてん)の精」の2種類があります。先天の精は減るばかりですが、後天の精は脾でつくられるので、補充されます。
しかし腎精は貯蔵されるばかりではなく、生命活動で日々消費されます。そのため、乱れた生活習慣は精を無駄に使っていることになるのです。また、生まれたあと、小さい頃から虚弱体質や発育不全のある場合は、先天の精も十分でないとも考えられます。これは精子や卵子の頃から生まれるまでの両親の腎精が不足していたり、体調が悪かったことが原因と考えられます。妊娠が成立し無事出産にいたるためには、日々の食事や睡眠など生活習慣がとても大切です。
腎精を補う方法
腎精が消耗し少なくなっていると妊娠力や妊娠を維持する力が弱まるため、腎の陰陽のバランスを調整したりすることを一番大切にします。腎精を補うために、鹿の角などの動物生薬を中心とした、補腎益精(ほじんえきせい)薬を使い、補腎(ほじん)します。体質により適切な補腎剤は違うので、服用の場合は漢方専門の薬剤師に相談してください。
漢方で見た不妊の原因:女
腎虚以外に問題があっても妊娠には至りません。
ここでは、腎・肝・脾ごとに女性の不妊原因の例について、解説します。
腎
腎虚になってくると、卵巣の働きや能力低下を招くと考えられています。早発閉経が起こる人は、腎の力の弱い人だと言えます。
肝
漢方では「肝は疏泄(そせつ、流れのこと)を主(つかさど)る」と言います。月経の状態(周期や経血量、排卵痛など)も含め体の機能に問題がないのは、肝がきちんと働いているからです。肝の流れを整えると月経状態が良くなる場合もあります。
さらに「肝は血を蔵(ぞう)す」ともいい、血液を蓄える臓器でもありますが、この血によって子宮内膜が作られ、胎児も成長します。妊娠の成立や無事な出産には、肝に充分な血がなくてはなりません。
気や血の流れが滞っていることを、漢方では「瘀血」と言います。瘀血があると、激しい生理痛や子宮筋腫などの病気を引き起こす場合があります。
脾
脾は妊娠や出産に必要な気・血・水を消化した飲食物から吸収し、必要な部位へ送り届けるために重要な役割を果たしています。日常生活では、栄養バランスのよい食事を摂取し、心と体が疲れ過ぎないように注意することが大切です。日本人には脾の働きが弱い体質の人が多いとも言われています。
女性の不妊の原因については以下でも説明していますので、読んでみてください。
漢方で見た不妊の原因:男性
男性も、腎虚以外に問題があっても妊娠には至りません。
ここでは、腎・肝・脾ごとに男性の不妊原因の例について、解説します。
腎
精子数や運動率、形態などは腎の状態に影響され、腎の状態が良いと精子の状態もよくなります。腎は加齢で弱まり、精子も老化して染色体異常が増えるとも言われています。染色体異常があると妊娠しても成長できず流産してしまうので、漢方薬を使って腎虚を改善しておくことは、無事な出産のために大切です。
肝
ストレスや緊張は肝の気の流れを滞らせるので、精子の元気を失くしてしまいます。同じようにホルモンバランスも乱し、男性不妊の原因になり得ます。「肝鬱気滞(かんうつきたい)」とは、このような状態のことです。漢方薬を使って、肝気がスムーズに流れるようになれば、改善されます。
脾
脾で消化吸収した飲食物から気や血は作られ、この気血から精は生成されます。気血が十分でないと逆に精から気血がつくられるので、精は少なくなります。しかし、必要以上に飲食物を摂取すれば良いわけではありません。
脾に負担がかかるので栄養の吸収が悪くなり、気血が不足してしまいます。肥満だと気血の流れが良くないので、十分に行き渡らなくなります。気血を満たし、良く流れるようにを整えれば、精子の動きは良くなり、勃起や射精の機能を改善します。
男性不妊については以下でも解説していますので、読んでみてください。
まとめ|腎が最も大切!漢方薬局で不妊症を治療する方法
この記事では、不妊についての漢方の考え方、腎虚と漢方、漢方でみた男女別の不妊の原因について、解説してきました。
妊娠に最も大切なのは腎で、腎虚の場合、補腎することで不妊症の改善につながります。
不妊症や婦人科系疾患、その他のことでお悩みのある方はなごみ堂漢方薬局の薬剤師にご相談ください。都合の良い時間に予約することも可能です。また電話相談や、LINE相談も行っています。お気軽にご相談ください。