不妊に漢方は効く?不妊症の原因と漢方薬治療を解説

この記事の監修者
片山智子
漢方薬なごみ堂 / 漢方薬剤師
片山 智子
東京・横浜・札幌などで漢方薬の経験を積んで参りました。 女性薬剤師として、女性ならではのデリケートなお悩みをご相談ください。お身体の状態をよく伺った上で、あなたに合った漢方薬をご提案させていただきます。 なかなか相談できない…などと一人で悩まずに、一度ぜひご来店ください。

「なかなか妊娠できない、もしかして不妊?」

「妊活に漢方薬って効果があるの?」

自然に妊娠するということは簡単なものではなく、さまざまなタイミングが重なることで起きる「奇跡」といえます。

厚生労働省の資料によると、日本では約4割の夫婦が不妊症の心配をしたことがあり、医療機関で不妊の検査や治療を受けたことがある夫婦は約2割いると報告されています。

そんな不妊症に悩む人への治療の一つとして漢方薬の服用があります。

漢方は近年その有効性が評価されています。

また西洋薬と違い漢方薬は一般的に副作用が少ないといわれているので、妊娠・出産を目指す人も安心して使用できます。

この記事では不妊と漢方について、その効果や処方される漢方薬などについて解説します。

不妊症の原因などについても解説しているので、不妊で悩んでいる人・妊活中の人は是非参考にしてください。

不妊症や妊活に漢方は効果がある?漢方薬の種類も解説

不妊症や妊活に漢方は有効とされています。

なぜ漢方薬が不妊症に効果があるのか、不妊の原因や不妊症で処方される漢方薬などについて詳しくみていきましょう。

 

不妊症とは

不妊症とは、妊娠を望んでいる男女が避妊をせずに性行為を行っていても1年以上妊娠しない状態をいいます。

加齢とともに妊娠の確率も低下していくことがわかっており、近年の晩婚化によって不妊で悩む人はさらに増えているといわれています。

年齢が高い場合や月経異常など何らかの症状がある場合は、1年未満であっても早めに産婦人科で医師による不妊検査・診断・治療を受けることを推奨されています。

月経はホルモンやストレスなどの影響を受けやすく、周期が乱れやすいです。

周期が乱れると排卵日も必然的にズレてくるので、まずは基礎体温を測り自分がしっかり排卵しているか、平均的な周期はどのくらいなのかを把握することも重要です。

 

不妊症の原因

不妊症にはさまざまな原因があり、大きく分けると男性側の原因・女性側の原因の2つに分けられます。

それぞれの原因について、詳しく解説していきます。

 

男性側の原因

男性側の不妊原因として、精子の数が少ない・精子の運動率が悪い「造精機能障害」と、勃起障害や射精障害の「性機能障害」などがあります。

また精子は作られていても精子の通り道が狭くなっていたり閉塞したりしていると、精液中に精子がない「無精子症」・また精子が少ない「乏精子症」などを引き起こすことがあります。

これらの「精路通過障害」も男性不妊の原因とされています。

 

女性側の原因

女性側の不妊原因としては、排卵因子・卵管因子・頸管因子・子宮因子などがあります。

具体的には月経不順があると生理のような出血はあっても排卵が起こっていない場合があります。

また多嚢胞性卵巣症候群などホルモンバランスの異常をきたす病気があると、排卵が起こりにくくなります。

排卵はしていても卵管に異常があり精子が卵子まで辿り着けない、受精卵が子宮に戻ってこれない・子宮筋腫などがあり子宮内にうまく着床しないなども不妊症の原因に挙げられます。

しかし中には、診療・検査をしても特に問題はなく原因が特定できない「原因不明不妊」もあります。

卵巣の機能は年齢とともに低下し、年を重ねるほど妊娠確率も低下していくため、完全に機能を失ってしまう前に治療を開始することが望まれます。

 

漢方薬による不妊治療

 

漢方の基本的な考え方と不妊との関連性についてみていきましょう。

 

漢方医学の考え方

漢方医学は、「心身のバランスを整え本来持っている自然治癒力を高める」とあり、人の体は「気」「血」「水」の3構成で成り立っているというのが漢方の考え方になります。

「気(き)」は目に見えないが全ての基本となる生命活動のためのエネルギー源、つまり身体の原動力です。

「血(けつ)」は全身の栄養分で血液のこと、「水(すい)」は血液以外の体液のことになります。

「気」の働きにより「血」と「水」がバランスよく全身をめぐることで健康を維持できるというのが漢方の考え方です。

また漢方薬は体質や体型など一人一人の「証」を診断し、そこから気・血・水のバランスをみながら処方されます。

同じ病気あっても「証」が違えば処方される漢方薬も違ってくることがあるのです。これは西洋医学とは違う漢方医学独特の考え方といえます。

漢方で体質改善

冷えなどで血のめぐりが滞ると全身にうまく栄養を送れません。またストレスなどで気のめぐりが悪いとホルモンバランスの乱れに繋がり、妊娠しにくい身体になります。

漢方の不妊治療では、体質を改善して妊娠しやすい身体を作っていきます。 検査をしても不妊の原因が不明な場合には、特に漢方治療は有効です。

 

不妊症でよく使用される漢方薬

漢方薬にはたくさんの種類があります。

ここでは不妊症でよく使用される漢方薬を紹介します。

 

芎帰調血飲第一加減(きゅうきちょうけついんだいいちかげん)

血流を改善する牡丹皮(ぼたんぴ)、川芎(せんきゅう)などの活血剤を中心として、ストレスを改善する、香附子(こうぶし)、陳皮(ちんぴ)などの理気剤、 茯苓(ぶくりょう)など胃腸を整える補気健脾剤をバランス良く配合し、 ストレスから来る生理不順や多嚢胞性卵巣症候群の方の改善に服用して頂きます。

 

当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)

当帰芍薬散は血行を促進させ、全身に栄養を届かせ体を内側から温めることで冷えを改善していきます。

当帰芍薬散には、血液循環を良くする当帰(とうき)、筋肉が緊張するのを和らげ血管状態を良くする芍薬(しゃくやく)、血行を促進する川芎(せんきゅう)、水分代謝を調節する沢瀉(たくしゃ)、白朮(びゃくじゅつ)、胃腸を整える茯苓(ぶくりょう)の6つの生薬が配合されています。

体の冷えは女性ホルモンの分泌に影響を及ぼすことがあるため、血行を改善し冷え性を改善することはむくみや月経不順などにも効果が期待でき、妊娠しやすい体に整えることができるのです。

 

加味逍遙散(かみしょうようさん)

加味逍遙散は、精神的に不安定な状態を安定させる効果が期待できます。ストレスやイライラを改善することでホルモンバランスを整えてく れます。

加味逍遙散に含まれている柴胡(さいこ)、山梔子(さんしし)、薄荷(はっか)にはイライラや緊張を緩和させ・精神を安定させる作用があります。

また当帰(とうき)、芍薬(しゃくやく)など血行促進を促す複数の生薬が配合されているので、冷えを改善する作用も期待できます。

不妊や妊活での悩みはストレスとなることも多く、ストレスが自律神経の乱れを引き起こし妊娠力の低下に繋がります。

加味逍遙散は、これらの精神的なストレスやイライラにも効果が期待できます。

 

温経湯(うんけいとう)

温経湯は身体を温め血液循環を改善し、めぐりが良くなることで全身に栄養を行き渡らせます。

当帰芍薬散と配合されている生薬が重複しているものもありますが、温経湯は特に下半身の冷え改善に期待できます。

身体を潤す働きの阿膠(あきょう)、体を温めて新陳代謝を良くする人参(にんじん)、生姜(しょうきょう)、血流を良くする牡丹皮(ぼたんぴ)など、複数の成分から構成されています。

月経不順や生理痛の他、上半身の乾燥を防ぎ胃を整える作用があります。

 

桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)

桂枝茯苓丸は血が滞りめぐりが悪い「瘀血(おけつ)」を改善し、下半身の冷えを緩和し卵巣や子宮の血流が良くなることで、妊娠しやすい体を作ります。

血管を拡げ体を温める桂枝(けいし)、血液循環を改善させる桃仁(とうにん)、牡丹皮(ぼたんぴ)など複数の生薬で、血液や水分の代謝に働きかけます。

桂枝茯苓丸は、「お血」タイプの人に処方されます。

帰脾湯(きひとう)

血液や血流不足を改善する、当帰(とうき)、胃腸を整え、体力や気力を補う、人参(にんじん)、甘草(かんぞう)、脳をリラックスさせる、遠志(おんじ)、酸棗仁(さんそうにん)などが配合されています。

貧血や、睡眠不足などで、不妊症になっている方など、また第2子不妊などでお悩みの方、育児疲れなどがある方にお勧めです。

 

柴苓湯(さいれいとう)

不育症や習慣性流産に用いられることが多かった漢方ですが、不妊症や妊活でも使われています。

柴苓湯は内臓を健康になるよう整え、胃腸の消化や吸収の力を向上させます。また免疫機能にも作用することで体の抵抗力を高める作用も期待できます。

配合されている生薬で柴胡(さいこ)、黄芩(おうごん)は免疫反応を調整して炎症を和らげる作用があります。

また生姜(しょうきょう)、桂枝(けいし)など体を温める生薬は冷え性の改善に繋がります。 ストレスを和らげる作用もあるので、不妊症によるストレスの緩和も期待できます。

 

不妊症になっている原因は皆さんそれぞれ違います。

そのため妊娠しやすい改善の為の漢方薬も違ってきます。漢方相談の中で、詳しくお話をお伺いし、

妊娠できない要因を探り、適切な漢方薬を服用することで、妊娠しやすい体質へと導きます。