不妊治療を続ける中で、「体外受精へのステップアップ」を提案され、不安や期待が入り混じる方も多いのではないでしょうか。また、すでに体外受精や顕微授精に複数回チャレンジしたものの、うまくいかない…そんな経験をされている方も少なくありません。
西洋医学ではホルモン治療や技術の進歩により多くの方が妊娠されていますが、妊娠には「からだ全体の調和」も重要です。ホルモンや自律神経のバランス、卵巣・子宮の血流状態、ストレスなど、目に見えない体調の乱れが、採卵の成功率や卵子の質に影響を及ぼしていることもあります。
そこで注目されているのが漢方薬。身体のバランスを整え、妊娠力(妊孕性)を高めることで、「卵の質を高めたい」「採卵を成功させたい」という方の力になっています。
この記事では、採卵に向けてどのように漢方薬で体を整えるのか、効果が期待できる漢方薬や実際の妊娠事例も交えて詳しく解説します。
1.体外受精の採卵と漢方薬について
不妊治療を続けていく中で、病院から体外受精にステップアップを提案されたという方は多いと思います。
また体外受精や顕微授精を何度もチャレンジして、うまくいかないという方もいらっしゃると思います。
西洋医学での不妊治療の技術がどんどん進み、進歩する中でも、なかなか妊娠に至らないという方も多いのも現実です。
人間の身体は自律神経やホルモンのバランスによって、機能を正常に維持しています。
ストレスや過労や、加齢、生活習慣の乱れによって、これらの機能が正常働かなくなると、バランスが崩れて、妊孕性(にんようせい)が低下します。
漢方薬はホルモンや自律神経のバランスを整えて、妊孕性を上げていきます。
今回は「これから採卵を控えている」、「卵の質をよくしたい」という方に採卵に向けての漢方薬を解説していきたいと思います。
2.採卵がうまくいないケースとその原因
採卵は、体外受精や顕微授精において、スタートであり、卵の質が良いことが、採卵後に続く、胚移植、妊娠判定を大きく左右するため、非常に重要といえます。
採卵がうまくいかないケースは、
採卵できない
採卵できたが質がよくない
採卵したが受精しない、受精後分割が進まない
などがありますが、
多くは卵巣機能の低下が考えられます。
また、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の方は卵は多数とれるが、卵の質が良くないということもあります。
上記のようなケースは、
AMHが低く卵巣機能が低い事
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)などホルモンバランスの崩れが考えられ
その他、加齢やストレス、血流障害、冷えなども影響しています。
3.漢方で整える「卵子の質」
※漢方で身体の機能を五臓(肝 心 脾 胚 腎)に分けると、生殖にかかわる機能は腎に含まれます。そのため「腎虚」になると、卵巣機能や、黄体機能が低下する要因となります。
![]()
特に「腎陰虚」の状態になると、卵の質の低下をまねき、排卵が早くなる、ほてりやのぼせ、おりものが少なくなるなどの自覚症状を感じる方もあります。
※また身体の構成要素を(気・血・水)に分けて考えます。
![]()
血流障害である「お血」や血が消耗された「血虚」になると、卵巣の卵を育てる環境が酸化により、悪化し卵巣機能の低下につながります。
またストレスによる「気滞」は脳からの指令のホルモンバランスに影響するとともに、交感神経が優位となり、血流悪化の原因になります。
漢方薬は「お血」「血虚」「気滞」「腎虚」を改善し、卵巣の環境を整え、採卵数、質向上を目指します。
4.採卵に向けたおすすめの漢方薬や中成薬
婦宝当帰膠(ふほうとうきこう)
冷え・貧血傾向の方向け。血を補い巡らせる働き。「血虚」のタイプに向いています。
知柏地黄丸(ちばくじおうがん)
おりものが少なく、軽いほてりやのぼせなどもある。「腎陰虚」のタイプに適しています。
加味逍遥散(かみしょうようさん)
イライラや気分の落ち込みなど、ストレスがたまり、ホルモンバランスを崩してしまっている方向けです。
芎帰調血飲第一加減(きゅうきちょうけついんだいいちかげん)
瘀血体質・血流不全の方向け。子宮内の血流改善が見込まれます。
亀鹿二仙膠(きろくにせんきょう)
亀板や鹿茸などの動物生薬を配合していることから、補腎のはたらきが強い。加齢や低AMHなどの方におすすめしています。
これらの漢方薬を組み合わせて服用いただくこともあります。
※服用の際は、漢方薬専門の薬剤師にご相談ください。
![]()
5.漢方薬を服用しながら体外受精で授かった事例紹介
29歳
<<ご相談内容>>
体外受精で移植を2回したが陰性判定。
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)のためAMHは高め。
採卵数は多いのだが、グレードが低い。
漢方薬を服用して、再度体外受精にチャレンジしたいとご相談に来られました。
おりものが多く、生理周期が安定せず、生理痛もひどい。
<<漢方薬服用後>>
生理痛や、おりものが多い、PCOSなどから、漢方薬は活血剤と化痰剤を服用いただいた。
月経周期も整ってきて、生理痛も軽減された。
漢方薬を服用開始から、4か月後に採卵した。
胚盤胞 4AA3個 と4AB5個を凍結できた。
その後一回目の移植で、妊娠されました。
39歳
<<ご相談内容>>
採卵したところ4個取れたが、凍結できた胚は1個。その胚を移植をしたが、陰性判定。
AMH0.65と卵巣機能は低い。
漢方薬を服用し卵の質を上げたいとご来店された。
<<漢方薬服用後>>
低AMH、採卵数が少ないことから、補腎剤と活血剤を服用いただいた。
漢方薬服用から4か月経過して、採卵された。
胚盤胞を2個凍結できた。
そのうちの1個を移植し、妊娠判定陽性となった。
6.漢方薬を選ぶ際の注意点とよくある質問
漢方薬を服用するときの注意点は、第一に自分に適した漢方薬を服用することです。
例えば、冷えがある方と、逆にほてりがある方では、違うタイプの漢方薬を服用する必要があります。同じように排卵がいつも早い方と、排卵が遅い方、AMH が低い方と、PCOSなどでAMHが高い方では、逆のタイプの漢方薬が効果があります。
そのため漢方薬を服用する際は、漢方薬専門の薬剤師に相談して、自分が「お血」タイプなのか、「腎虚」タイプなのか、または「お血」「気滞」「腎虚」が組み合わさったタイプなのか・・・
などを見極めて、自分の体質に適した漢方薬を服用することをお勧めします。
7.まとめ:漢方で整え、採卵のチャンスを最大限に
体外受精にチャレンジする場合、卵子の質や子宮環境がとても重要です。
採卵前に卵子の質を上げるためには、身体全体の機能が正常で、特に卵巣の機能が充実していることが大切です。
漢方薬は身体の根本を整える力があります。
「お血」を改善する活血剤で血の巡りをよくし、「気滞」を改善する理気剤でストレスをうまく流し、「血虚」を改善する補血剤で血を補い、「腎虚」を補う補腎剤で卵巣機能を改善し、身体の根本の力を取り戻しましょう。
漢方薬は自然由来の生薬からできており、長期の服用も安心です。
また毎日自宅で服用することで、体質を改善できます。
遠方の方はお電話で今までの治療経緯や、検査結果、生理周期や自覚症状、体質などを詳しく、お伺いし、漢方薬をご自宅に配送することもできます。
お気軽にご相談ください。

