17Aug
パニック障害とは?突然起こる強い不安と身体症状
「突然、心臓がバクバクして息が苦しくなる」
「電車に乗ると『また発作が起きるのでは』と不安になる」
そんなつらい症状にお悩みではありませんか?パニック障害は、多くの方が「自分の気持ちが弱いから」「性格のせい」と自分を責めてしまいがちですが、決してそうではありません。
パニック障害の仕組みや病院での治療、そして東洋医学においてどのように捉え、体質改善を目指していくのかを詳しく解説します。
パニック障害とは、特別な理由もないのに突然強い不安や恐怖感に襲われ、それに伴ってさまざまな身体症状が現れる病気です。
主な症状
激しい動悸(心臓が破裂しそうなほどバクバクする)
息苦しさ・過呼吸(息が吸えない、窒息しそうな感覚)
めまい・ふらつき
急激な発汗や手足の震え
「このまま死んでしまうのではないか」という強い恐怖感
これらの激しい発作(パニック発作)は、通常10分〜数十分程度でピークを迎え、やがて治まります。しかし、一度体験すると「またあの発作が起きたらどうしよう」という強い不安(予期不安)が生じやすくなります。
その結果、発作が起きたときに逃げ出せない場所(電車、バス、人ごみ、美容院など)を避けるようになり(広場恐怖)、外出や日常生活に支障をきたしてしまうことも少なくありません。

パニック障害の原因|自律神経とストレスの関係
パニック障害は「心の持ちよう」や「気の持ちよう」で起きるものではありません。近年の医学でも、脳内の神経伝達物質のバランスや自律神経の乱れが関係していることが分かってきています。
漢方的にも、体のバランスを崩す以下のような要因が複雑に絡み合って起こると考えます。
過度なストレスや過労の蓄積
睡眠不足による自律神経の疲弊
長期間にわたる緊張状態の継続
女性ホルモンの急激な変動が自律神経に大きく影響。
生理前(PMS):ホルモンの変動により、予期不安や息苦しさが強まりやすい
妊娠・産後:出産直後のホルモン激変と、育児疲労・睡眠不足による発作
更年期:エストロゲンの減少で自律神経が乱れ、のぼせや激しい動悸が起きやすい
以上のように心が弱いから起きるのではなく、「体が限界を迎えているサイン(反応)」として発作が起きているのです。
病院での治療とよくある不安
病院(心療内科・精神科)での標準的な治療では、主に以下が行われます。
薬物療法:抗不安薬や抗うつ薬(SSRIなど)を用いて脳内の伝達物質を整える
認知行動療法:物事の受け止め方や行動パターンを整理し、不安を和らげる
西洋医学のお薬は、激しい発作をすばやく抑えるために非常に強力で効果的です。しかし、漢方薬局に相談に来られる方の多くは、次のようなお悩みを抱えています。
「薬を飲むと眠気やだるさが強くて生活に支障が出る」
「薬への依存が心配で、できれば減らしていきたい」
「西洋薬での治療と並行して、体質改善などの自然なアプローチも取り入れたい」
漢方は、そうした「体質から見直したい」「負担の少ないアプローチを併用したい」という方に非常に適した選択肢となります。
自己判断での断薬・減薬は禁物です
すでに医師から処方された薬を服用されている方は、急にやめると、反動で症状が悪化する場合があります。お薬の減量・中止は必ず主治医と相談しながら行いましょう。漢方薬は併用からスタートすることをお勧めします。
漢方で考えるパニック障害の原因
漢方医学では「心身一如(しんしんいちにょ)」と考え、心と体はつながっていると捉えます。体に巡るエネルギーである「気(き)」、全身に栄養を運ぶ「血(けつ)」、潤いを与える「水(すい)」のバランスが崩れることで、不安や身体症状が引き起こされると考えます。
パニック障害でよく見られる体質(状態)は以下の通りです。
気滞(きたい)
ストレスによって「気」の巡りがスムーズにいかず、滞っている状態。胸のつかえ感、息苦しさ、喉の違和感などが生じやすくなります。
気逆(きぎゃく)
本来は下に向かうはずの「気」が、ストレスや過度の緊張によって、上へ逆流する状態。突然の強い動悸、のぼせ、吐き気、発汗、呼吸困難や急激な不安感を引き起こします。
心脾両虚(しんぴりょうきょ)
長年の疲労や消化吸収力の低下により、エネルギーと栄養(気血)が不足している状態。心が十分に養われず、常に漠然とした不安感があり、不眠や体力の低下を伴います。
肝気鬱結(かんきうっけつ)
自律神経や感情のコントロールを担う「肝(かん)」の働きが、ストレスによって滞っている状態。イライラや感情の波が激しくなりやすくなります。
腎虚(じんきょ)
生命力の源である「腎(じん)」が衰えている状態。「腎」は東洋医学で「恐怖心」と深い関わりがあるため、ここが弱ると過度な恐怖感や慢性的で深い不安に襲われやすくなります。
痰湿(たんしつ)
体内に余分な水分や「粘り気のある濁り」が溜まっている状態。胸苦しさ、めまい、頭の重だるさ、吐き気などの症状となって現れます。
パニック障害に用いられる漢方薬の一例
漢方では病名だけで一律に処方を選ぶのではなく、一人ひとりの体質や症状の出方(前述の「気滞」「気逆」など)に合わせて処方を選びます。代表的な漢方薬をご紹介します。
半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)
主な症状:喉のつかえ感(ヒステリー球)、息苦しさ、喉や胸の圧迫感、予期不安
特徴:「気滞」を改善し、滞った気を巡らせて喉や胸の通りを良くします。
柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼきとう)
主な症状:激しい動悸、緊張感が強い、不眠、イライラ、体力が比較的ある方のパニック
特徴:神経の過剰な興奮を落ち着かせ、上に向かった気を鎮めます。
柴胡疏肝湯(さいこしかんとう / さいこそかんとう)
主な症状:ストレスで胸や脇・お腹が張って苦しい、ため息が多い、イライラ・抑うつ感
特徴:ストレスでガチガチに滞った「肝(自律神経)」の気を強力に巡らせ、緊張や体の凝りを和らげます。
女神散(にょしんさん)
主な症状:産前産後や更年期の急激な不安・のぼせ・めまい、精神不安、気分の落ち込み
特徴:女性ホルモンの変動(血の道の乱れ)に伴うパニックや自律神経症状に優れ、のぼせや気逆を鎮めます。
桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼきとう)
主な症状:疲れやすい、神経過敏、眠りが浅い・夢が多い、不安感が強い
特徴:体質が繊細な方のエネルギーを補いながら、精神的な興奮を穏やかに鎮めます。
帰脾湯(きひとう)
主な症状:心身の疲労、顔色が悪い、慢性的な不安感、熟睡できない・途中で目が覚める
特徴:消化吸収を高めて「気血」を作り出し、心(心身の安定)を補養することで、疲労困憊からくる不安や不眠を根本から和らげます。
苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)
主な症状:めまい、立ちくらみ、ふらつき、動悸、胃の不快感
特徴:体内の偏った水分を排出(「痰湿」の改善)し、気の逆上を鎮めます。
温胆湯(うんたんとう)
主な症状:夢をよく見る、びくびくしやすい(驚きやすい)、胸苦しさ、吐き気、痰が多い、眠りが浅い
特徴:胃腸の働きを整えながら体内の粘り気のある水分の停滞(「痰湿」)を取り除き、心身の胆力(精神的な強さ)を取り戻します。
※これらは一例です。漢方薬専門のカウンセリングを受けて選ぶことが重要です。

漢方薬はどのくらいで変化を感じる?
「漢方は効くまでに何ヶ月もかかるのでは?」と心配される方も多くいらっしゃいます。
数日〜数週間:動悸の頻度やめまい、胸のつかえといった身体症状、または緊張感のやわらぎは、早い方だと数日〜数週間で実感されることがあります。
1〜3ヶ月:体質そのものを改善し、自律神経の土台を安定させるためには1〜3ヶ月程度がひとつの目安となります。
漢方薬で改善の過程では、症状が直線的に良くなるというよりは、「 良くなったり少し波があったりを描きながら、全体的に発作の頻度や強さが減っていく」経過をたどることが多いです。睡眠や生活リズムの改善も合わせながら、焦らずじっくり調整していきます。
症例紹介|パニック発作が落ち着いたケース
当薬局で漢方薬をお飲みいただき、症状が落ち着いた方の事例をご紹介します。
症例1:30代女性 電車に乗ると息苦しさと動悸がしていた
ご相談時の状況:通勤電車の中で突然息苦しくなり途中下車。それ以来「また起きるかも」と電車に乗るのが怖くなった。毎朝夕の通勤の不安以外にも、喉の詰まり感や夜間の浅い睡眠に悩んでいました。
漢方的な見立て:ストレスによる「気滞」と「気逆」が顕著な状態。
経過:漢方薬は気逆を改善するための理気剤を中心に処方。服用から2週間ほどで喉の詰まり感が解消され、睡眠が深く取れるように。1ヶ月後には各駅停車で少しずつ電車移動ができるようになり、3ヶ月後には快速電車でも不安なく通勤できるようになりました。
症例2:40代男性 過労が続き、動悸と激しい不安感に襲われた
ご相談時の状況:仕事の繁忙期に突然の動悸・不安感、手足の汗に襲われ救急搬送(検査異常なし)。以降、慢性的な疲労感と「また倒れるのでは」という不安が消えずご来局。仕事も一時休職している。
漢方的な見立て:過労と睡眠不足による「心脾両虚(エネルギー切れ)」と「気逆」。
経過:気血双補の働きの漢方薬を服用開始。1ヶ月で唐突な動悸や不安感の回数が減少し、夜もぐっすり眠れるようになり、体力が回復傾向に。生活リズムの見直しも併行して行い、3ヶ月後には不安感から解放され、職場にも復帰でき、元のペースで仕事に取り組めるようになりました。
パニック障害を悪化させない生活習慣
漢方薬の服用と同時に、日常の生活習慣を見直すことで回復がよりスムーズになります。
睡眠をしっかり整える:自律神経を修復する最大の手段です。夜更かしを避け、決まった時間に布団に入りましょう。
カフェインや刺激物を控える:コーヒー、緑茶、エナジードリンクなどのカフェインやアルコールは交感神経を刺激し、動悸や不安を誘発しやすくなります。
深呼吸(特に「吐く」意識):息を「ゆっくり長く吐く」ことで副交感神経が働き、心身がリラックスします。
軽い運動を取り入れる:散歩やウォーキング、ストレッチなどで身体を動かすと、「気」の巡りが良くなります。
無理な予定を詰め込まない:「休むこと」も治療の一部です。心とスケジュールに余白を作りましょう。
発作が起きたときの対処法
万が一発作が起きそうになったら、「息をゆっくり吐き出すこと」だけに集中してください。「この発作は数分〜十数分で必ず収まる」「命にかかわることはない」と心の中で言い聞かせ、体を楽な姿勢に保ちましょう。
まとめ|パニック障害は心だけでなく体から整える視点も大切
突然襲ってくる動悸や息苦しさ、そして「また起きたらどうしよう」という恐怖感——。
パニック障害のつらさは目に見えないからこそ、周囲に理解されにくく、「自分が弱いのかな」「もっとしっかりしなきゃ」と一人で抱え込んでしまいがちです。
しかし、どうかご自身を責めないでください。
パニック障害は、あなたの気合いや性格の問題ではなく、日々頑張り続けてきた心と体が発している「少し休んで」という大切なSOSのサインです。
漢方薬には、乱れてしまった自律神経や気血のバランスを整え、「心と体を一緒に楽にしていく」という優しいアプローチがあります。西洋医学のお薬で発作を抑えつつ、漢方で発作が起きにくい体質へ整えていくこともできます。
「この症状、どのくらいで良くなるのかな?」「病院のお薬と一緒に飲めるのかな?」
そんな些細な疑問や不安でも構いません。どうか諦めず、まずは一度、専門の漢方薬局へご相談ください。あなたの体と心に寄り添い、日々の不安を解消し、本来の笑顔を取り戻すお手伝いをいたします。
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