6Jan
生理前になると、めまいや頭痛、むくみ、イライラなどの不快な症状が現れるという方は少なくありません。これらはPMS(生理前症候群)と呼ばれ、女性特有のホルモンバランスの変化が原因で発生します。特に、生理前は黄体ホルモンの働きによって体内の水分が増え、内耳や血流に影響を及ぼすため、めまいやむくみを引き起こしやすい状態になります。
漢方薬を取り入れることで、ホルモンバランスや自律神経を整え、生理前特有の不調を改善することが可能です。本記事では、漢方の考え方を基に、めまいをはじめとする生理前の不調を和らげる方法や体質改善のポイントをご紹介します。
Contents
1. はじめに:生理前のめまいに悩む女性へ、漢方で自然に改善を目指
生理前になると、めまいやその他の不快な症状がみられるといったお悩みの方が多くいらっしゃると思います。それらの生理前の症状はPMS(生理前症候群)といわれ、多くの女性のお悩みと言えます。
女性は生理周期でホルモンの変化がおこります。エストロゲン(卵胞ホルモン)からプロゲステロン(黄体ホルモン)に移行する生理前は、黄体ホルモンの働きから、身体に水をためやすくなります。過剰な水分が内耳にたまると、めまいがおきたり、頭痛がしたり、むくみやすくなったり、身体の不調につながります。
また、生理前は血液が子宮に集まっていくので、脳血流が低下してめまいを発症しやすくなります。
他にも黄体ホルモンの働きで、生理前はイライラや気分の落ち込みなど、精神的にもバランスを崩しやすくなります。
生理前におこるめまいやイライラ、その他の症状を漢方薬を服用することで、ホルモンのバランスを整えめまいやPMSの出ない体質へ改善していきます。
2 漢方の考え方:生理前のめまいを改善する「気・血・水」のバランス調整
東洋医学では、 身体の構成要素を 「気」「血」「水」に分けて考えます。 この 「気」「血」「水」のバランスが整っていることで身体の健康状態を保っています。
「気」は 体の生命エネルギー の ようなもの
「血」や「水」 を巡らしたり体を温めたり 色々な外邪(ウイルスや病気)といったものから守る力です。気の不足した状態を「気虚」と言います。気虚になると、免疫力が低下し、疲れやすくなったり、細菌感染などにかかりやすくなります。ストレスがかかり気がうまく流れず滞った状態を「気滞」と言います。気滞になるとリラックスできず、イライラしやすくなったり、交感神経が優位となる為、血管が収縮し血流が悪くなり、血圧が上昇したり、めまいやイライラなどの症状が出やすくなります。
「血」は身体を滋潤したり 栄養素を運んだり、 ホルモンのバランスに影響
「血」の流れが悪い状態を「お血」と言い、「血」が不足した状態を「血虚」と言います。ストレスは交感神経優位となり、血管が収縮しお血を生じます。
生理前は子宮に血液が集中しやすくなるため、脳血流が低下し、血虚の状態となる為、めまいが生じやすくなります。
「水」は 血液以外の液体を表す
「水」が滞った状態を「水滞」や「痰湿」といいます。水が身体の中で停滞してしまう事で、むくみやすくなり、その過剰な水が三半規管にたまる事で、めまいが発生します。生理前は黄体ホルモンのはたらきにより、身体に水を貯留しやすくなるため、内耳の水分も増えめまいが生じやすくなります。
「気虚」「気滞」「お血」「血虚」「水滞」「痰湿」
などの体質を「証」といい、その証により、漢方薬での改善処方が決まります。
「気虚」の改善の漢方薬は「補気剤」
「気滞」の改善の漢方薬は「理気剤」
「お血」の改善の漢方薬は「活血剤」
「血虚」の改善の漢方薬は「補血剤」
「水滞」の改善の漢方薬「利水剤」
「痰湿」の改善の漢方薬は「化痰剤」です。
また「気滞」や、「お血」、「水滞」などの要因は1つでも、気・血・水はお互いに、影響しあうため、気滞、お血、血虚などが同時に発生している方も多く、めまい以外にもその他の症状、例えばイライラや、不眠、肩こり、動悸、耳なり、むくみ等を発症し時間と共にこじらせてしまう原因となります。
3. 生理前のめまいに効く漢方薬:症状別のおすすめ処方
当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
血虚による血行不良や冷えが原因で生理前にめまいが起こる場合に効果的。特に貧血やむくみを伴う症状に適しています。
加味逍遙散(かみしょうようさん)
ストレスやホルモンバランスの乱れが原因のめまいに適した漢方薬。気分の落ち込みやイライラ、不安感を伴う場合に有効です。補血剤と、理気剤が配合されていることで、ホルモンと自律神経のバランスを整える働きがあります。
柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)
精神的な緊張や不安からくるめまいに効果的です。疏肝解鬱剤が心を落ち着かせ、ストレスによる体の不調を改善します。
苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)
黄体ホルモンの影響で身体に貯留した水分を排出することで、めまいやむくみを改善します。
4. 漢方薬を使った生理前めまいの治療を始める際のポイント
漢方薬を効果的に服用するためには、前述のように自分の体質を見極めその体質に合った漢方薬を服用することが大切です。自己判断で服用開始をせず、漢方薬専門の薬剤師に相談し、適切な漢方薬を服用するようにしましょう。
漢方薬の効果が現れるまでの期間については個人差があります。症状の重い方や、めまいを発症して、何年も経過している方は、めまいが改善したと実感するまで、時間がかかるかもしれません。早く効果があらわれる方は、漢方薬服用開始から1週間くらいで、改善を実感されます。短期的に良くなっても、漢方薬の服用をすぐにやめてしまうと、再発する可能性がありますので、4~6ヶ月は継続して服用されることをお勧めします。
漢方薬は他の薬と比べると副作用が少ないという特性から、長期服用しても安心です。そして長期服用することで、めまいの予防にもなり、めまいの再発しない体質へと改善していきます。また自律神経のバランスを整えることで、その他のイライラや頭痛、むくみといった不定愁訴も改善できます。
5. 生理前のめまいを予防するための生活習慣と漢方の相乗効果
生理前は黄体ホルモンの影響でめまいやその他の症状が出やすくなってきます。
黄体ホルモンは身体に水分を貯留させる働きがある為、過剰な水分摂取は控えましょう。
運動や、入浴で身体を温め、代謝をあげて、発汗などにより、身体に水をためないような生活習慣を心がけましょう。
ストレス管理が自律神経を整え、のぼせやめまいの再発防止に役立ちます。瞑想や深呼吸、リラックス法、ウォーキング、ストレッチ、ヨガなどの軽い運動を、日々の生活に取り入れるようにしましょう。
バランスの取れた食事と規則正しい生活リズムが、ストレスを減らし、めまいの予防に役立ちます。特に、冷えや血行不良を改善するための食材、例えばショウガやにんにく、根菜類などを積極的にとるようにし、身体を冷やす生野菜や冷たい飲み物は、ひかえるようにしましょう。
生理前は子宮に血液が集まり、めまいがおこりやすくなります。
血液を補う効果のある食材、鶏肉や、レバー、ほうれん草、ヒジキ、プルーン、黒ゴマなどを積極的にとるようにしましょう。
睡眠の質を高め、十分な休息を取れるようにしましょう。寝ている時間は、おきているときにバランスを崩した自律神経を整えるための大切な時間です。睡眠不足は自律神経を乱しやすくします。寝る前にスマートフォンを見ると、寝付きにくくなり睡眠不足の原因になります。布団に入ったらスマートフォンを見ないようにし、7~8時間の睡眠時間を確保するようにしましょう。
6. まとめ:生理前のめまいを漢方で根本から改善しよう
生理前のめまいは黄体ホルモンによる、水分の貯留や、ホルモンバランスの乱れによっておこる自律神経の崩れによるものが、多いと考えられます。
また生理前は子宮に血液が集まり血虚となり、めまいやその他の症状も出やすくなります。
漢方薬を服用することでホルモンや自律神経のバランスを整え、気・血・水の調和を保つことで、これらの不快な症状の再発を防ぐことができます。生活習慣の改善と漢方薬の併用で、健康的な体を手に入れ、日々の活力を取り戻しましょう。体質改善を目指すには、専門家のアドバイスを受け、自分の体質に適した漢方を服用することが重要です。長期的な視点で体を整えることで、めまいだけでなく、イライラや、不眠、頭痛、むくみなどの不調も改善され、今後の病気の発症予防にもつながります。