16Jun
「まばたきが多い」「咳払いが止まらない」「首を振る癖が気になる」このようなチック症状に悩む子どもたちが増えています。
チック症には運動チック(動き)と音声チック(声)があり、症状が長引いたり、強まったりすることでご家族も心配になることが多いです。中には成長とともに自然に治まるケースもありますが、大人になっても症状が続く・再発するという事例も見られます。
医学的には脳の「大脳基底核」や神経伝達物質の過敏さが原因とされ、ストレスや環境変化が症状の悪化要因とも言われています。
東洋医学ではチック症は「肝風内動(かんぷうないどう)」という病態と捉え、体質に合わせた漢方薬で心と体をやさしく整えていきます。
この記事では、
・チック症の原因と漢方の考え方
・よく使われる漢方薬の種類
・改善事例とセルフケアの方法
・専門相談のすすめ
を丁寧に解説します。お子さまの健やかな未来のために、一緒にできるケアを考えてみませんか?
1.チック症に悩む方へ、漢方薬によるやさしいケアの可能性
チックは、「まばたき」や、「首を振る」、「顔をしかめるような動き」を頻繁にする運動チック、
「咳払いを繰り返す」、「ハミングのようにフンフン言う」、「咳払い」などの音声チックがあります。
またトゥレット症候群は、1年以上にわたって運動チックと音声チックの両方がみられるときに診断されます。
年齢は小学生の時に発症することが多く、成長とともに症状がなくなることが多いのですが、中には高校生や大学生、成人になってもチック症が改善されないというケースもあります。
チック症の原因は脳の大脳基底核が関係していると考えられています。大脳基底核は神経系の情報を処理して身体の動きを調整しています。そこで神経伝達物質であるドーパミンとその受容体が過敏に反応し過ぎると、チック症状がおこります。
また大脳辺縁系や大脳皮質も関係していると考えられていますが、はっきりとは
わかっていません。
ストレスが原因でチックになると言われていましたが、前述のように脳の発達科学から原因が説明されており、もともと脳が過敏に反応するタイプや体質を持った方が、ストレスによって、チックが誘発されたり、悪化すると思われます。
東洋医学で、チック症は証(病態)でいうと肝風内動にあたります。そのためチック症の改善に肝風内動の改善の漢方薬を使います。
2.チック症の原因とは?漢方薬の視点から解説
※中医学では身体の機能を肝 心 脾 肺 腎に分けて考えます。
肝は自律神経や、大脳辺縁系の機能、筋肉の緊張などに影響を及ぼします。
チック症は証(病態)でいうと、肝風内動(筋のひきつり、首や、頭がゆれる、手足のふるえ等の症状)にあたります。
よって肝風内動に対応する、熄風剤の入った漢方薬を使います。
またストレスや環境の変化により悪化するといった場合は、肝気鬱血や、ヒステリックな声を発するなどがあれば心肝火旺の病態が考えられます。
その場合は、疏肝解鬱剤などを熄風剤と合わせて服用いただきます。
3.チック症に使われる代表的な漢方薬は?
抑肝散(よくかんさん)
熄風剤から構成されている。神経過敏・イライラ・怒りっぽさが強いタイプに効果が期待できます。
抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)
同じく熄風剤から構成されており、抑肝散に胃腸を整える成分を加え、ストレスで胃が弱っている子に対し効果が期待できます。
桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)
不安・興奮・緊張を伴うチック、夜驚・寝つきの悪さがあるタイプにも効果が期待できます。
甘麦大棗湯(かんばくだいそうとう)
精神の安定、夜泣きや情緒不安定に効果が期待できます。
半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)
喉の詰まり感、不安感からくるチック傾向の型に効果が期待できます。
4.漢方薬でチック症が改善した体験談
9歳、7歳の兄弟
最初は9歳のお兄ちゃんの御相談。
小学一年の夏休み頃から、瞬きのチックが始まり、それ以降顔をしかめたり、声が出たりという症状が不定期に起こる。
9歳のお兄ちゃんに漢方薬を服用いただいた。約一か月服用で症状が出なくなってきた。
精神的にも落ち着いているように見える。
お兄ちゃんが良くなったので、弟君もチック症があるという事で、漢方薬を服用開始した。
約一か月で弟君も症状が出なくなった。
2か月目に症状がまた出始めたので、熄風剤の漢方に理気剤を加えたら、症状が落ちついた。
15歳
今度の春から高校に進学する息子さんのお母さんからの御相談。
一年前から首を振ることが多い事に気づいた。
しばらくするとその症状はなくなったので、ほっとしていたら、最近また首を振り始め、前よりもひどくなった。新しい高校生活に対する不安があるのかもしれないとの事。
漢方薬服用から約一か月で首を振る回数が減ってきた。
3ヶ月経過でほとんどチック症は出なくなった。
部活にも励み、楽しく高校生活を過ごしている。
5.チック症を和らげる生活習慣とケアのすすめ
●睡眠環境の整備をしましょう。夜ふかしを避け、睡眠リズムを安定させることが肝心です。
●携帯電話やゲームをし過ぎると、脳が休まる暇がなく、悪化の原因になります。時間を決めてやる、などのルールを親子で話し合って決めましょう。
●食事の見直しで消化にやさしい食事、刺激物を控えるようにしてみましょう。
●ストレスケアでは、親子のスキンシップ、安心できる時間の確保。チック症状をやめるように強く言うことで、症状が強く出ることがあります。家庭内ではリラックスできる環境を整えましょう。
●適度な運動は、身体を動かすことで、脳がリラックスします。
●親が不安になると、子供もそれを感じてしまいます。親の不安や焦りを和らげることも大切です。
6.漢方の注意点とおすすめの相談先
チック症の改善の為の漢方薬を効果的に服用するためには、現在の症状や、現在までの症状の経過、どんな時に、症状が悪化し、どんな時に好転するか、などを詳しくお聞きすることが大切です。
ですから、漢方専門の薬局で相談して服用開始することをお勧めします。
漢方薬の効果は、早い方ですと服用開始から1週間くらいで症状が改善されます。
症状の経過をみながら、漢方薬の処方を変更する場合もありますので、漢方薬専門の薬剤師に相談しながら服用することをお勧めします。
7.まとめ
チック症は年齢と共に症状が改善し自然と治るという方がほとんどですが、中には大人になっても治らない、大人になって再発するといった方もいらっしゃいます。
原因は大脳基底核で神経伝達物質であるドーパミンとその受容体が過敏に反応し過ぎることでおこり、ストレスや環境の変化などで悪化します。
チック症は脳の過敏な体質のようなものですから、漢方薬で体質を改善し、自律神経のバランスを整えることで、症状の改善が可能です。
また漢方薬は自然由来の生薬から出来ており副作用が少なく、長期間安心して服用いただけます。
一人で悩まず、お気軽ご相談ください。
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